じいちゃん

292 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] 投稿日:03/03/21(金) 22:52
実家のじぃちゃんが危篤のとき、嫁の出産予定日とじいちゃんの山場が一緒だったので、駆けつけて最後を看取る事が出来なかった。
俺はじぃちゃんッ子で大変可愛がられたんだけど、90歳を過ぎた大往生だったし、
親類一同ほんのりした雰囲気で「やっとじぃ様も逝くか」なんて感じで
「お前は初子の誕生を見届けろや~」ってお言葉もあったのでそれに甘えた。

そのまま予定通りに「子供の誕生と、爺さんの命日が同じ」なんて有りがちな展開にはならず、
20時間の難産の末、一日違いで息子は産まれた。実家は日帰りできる距離なので
「判ってれば爺ちゃんを看取ってから戻ってきて…」なんてチョッと悲しかった。

今年4歳になる息子になんとなく問いかけてみた。
「ママから産まれてきたときの事覚えてるかい?」
「うん。暗いトンネルの中を光に向かって出てきたんだよ。」息子は無邪気に答える。
ほほぉー、幼児が出産のシーンを覚えてるってのは本当だったんだ。すげーな、おい。
他にどんな事おぼえてるんだろう?そう思いつつ
「ママはすごい大変だったんだよ。まるまる1日くらいかかっちゃったんだ。」
果たして子供に時間的な概念があったのだろうか?
「うん。僕も一生懸命出てこようとしたんだ。」
おぉ?結構正確に覚えてるものなのか?そう思ってると息子が続けて言う。
「だけどね…」えっ?


「おじいちゃんが僕を引っ張って出させてくれなかったんだ。」…じぃちゃん…

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