母の看病

411 :本当にあった怖い名無し:2007/07/22(日) 13:56:15 ID:88hfBSrq0
去年、母が病死(癌)してしまった。
病気が発見された時には既に手遅れの状態で病院でターミナルケアを受けながら
間もなく訪れるであろう死を待つしかなかった。
宣告されていた余命が1ヵ月を切った頃から、俺と父と妹の3人がそれぞれ交代で
病院に泊まり、母の看病をしていたが、俺の泊まり番の時に不可解な事が起きた。
 
死の2日前からは意識不明となったのだけれど、仕事や看病が続き、疲れていた俺は
傍らで眠り続ける母の寝顔を見ているうちに、うとうとしてしまいベッドに突っ伏すように
寝入ってしまっていた。(目覚めて気付くとそうなったいた。)
時刻は夜中の2時過ぎ。うたた寝していた時間は1時間弱だったと思うけど
目覚めた俺の肩にはバスタオルが羽織るように掛けられていた。
そのバスタオルとは母の看病のために病院に持ちこんでいたもので、確かその時には
テレビ台の下の引き出しにしまってあった筈だった。
不思議になったので、すぐに夜勤の看護師を呼び出し「肩に掛けませんでしたか?」と
尋ねてみたが、驚きの表情を浮かべて「掛けていません。不思議な事もあるもんですね…」
と答えが返ってきただけだったが、その次に続いた言葉何んとも言えない気持ちになった。
「ひょっとして…お母さんかも知れませんよ…」
 
この出来事は他の家族には話をしていない。話をしたところで信じてもらえないだろうから…

後日、この時の看護師とのやり取りが看護記録に記載されてないのだろうか?と
疑問になったので病院にカルテと看護記録の開示を求めてみた。
その時の担当してくれた方は訴訟沙汰かと身構えていたが、そうではないからと
(本当の理由は言える筈もないのだが…)納得させて両方のコピーをもらってきた。
看護記録には生前の母の言葉が、記載されてあったのだけれど、俺が一番知りたいと
思っていたその時のやり取りに関した具体的な事は記載されておらず、強いて挙げれば、
「息子さん(俺)がかなり疲れています」との言葉だけ。
つまり俺の身の上に起きた信じがたい出来事は俺の健忘か妄想の類となっていた訳。
それでも母と過ごした日々は俺の記憶には、しっかりと刻まれているのだけは確かだ。

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