三月二十八日まで待ってくれ
798 :最近本で読んだ話:2007/06/24(日) 01:55:01 ID:CiKgDK9v0
春休み、その人は大学の友人の実家に数泊の予定で遊びに行った。
友人の実家は田舎の旧家で映画に出てくるような純和風の屋敷だった。
近所の住人も元をたどればみんな親戚だという。
友人の祖父母、両親が出迎えてくれたが、何やら様子がおかしい。
妙に重苦しい空気が家中に漂い、電話が鳴るたびに家人は怯えている。
「時期がよくなかったんじゃ? 予定切り上げておいとましようか?」
とその人は提案したが友人は
「迷惑かけることになるかもしれないが三月二十八日まで待ってくれ」
と言う。友人の言葉を信じ待つことにした。二十八日は二日後。
その前日の三月二十七日。
家の中の重苦しさはピークに達し、友人を含め家人みんなほとんど口を利かない一日が過ぎた。
そして時間が流れ、日付が二十八日に変わった午後零時。
それまでの重苦しい雰囲気は嘘のように一転し、
友人の母と祖母は台所で何やら支度を始めた。
そしてそんな時間帯にもかかわらず玄関の戸が陽気に叩かれた。
やってきたのは近所に住む親戚一同。
彼らの手にはさまざまな酒類が握られていた。
訳が分からないその人も巻き込まれてなぜか大宴会が始まった。
「これは一体何のお祝いなんですか?!」と訊ねても
「まあまあお客人どうぞ一杯」と次から次へとお酌をされ
勧められるがまま飲むしかなかった。
目が覚めたのは昼過ぎだった。
「今までのことを説明するから一緒に来てくれ」
と友人が言う。
付き従って向かった先は墓地だった。
近所の住人と同様、埋葬されているのは友人の先祖や親戚たちだと言う。
順に墓石を見ていくと比較的新しい墓石も古い墓石も
そこに埋葬されている故人の命日は全て例外なく三月二十七日だった。