道東の沢

320 :本当にあった怖い名無し:2020/12/26(土) 08:19:29.58 ID:qzuCRh6j0.net

スレチだが
北海道、道東の沢を、地元の方々と一緒に渓流釣りに行った
彼らの仕事は測量士で、屈強で、いかにも山の男のよう
冗談好きで、いつも笑顔で大酒飲み
夜は焚き火をしながら釣ったオショロコマやフキやらを料理してくれた
次の日、連なって沢沿いの道を大人達とワイワイ言いながら帰っていると
突然、自分の全身の毛穴が開き、後頭部に向けて皮膚を引っ張られ
ゾワゾワゾワっとしたとたん、沢の音が消えるような体験をした
恐ろしくなり、歯をガチガチと震わせながら皆にその状況を話しても
誰も見向きもせず、前を向いて黙ったまま、能面のような顔で歩くばかり
自分は、今まで仲良くしていた大人達に無視された事と恐怖でショックだったが
数分経つと、嘘のようにもとの体にもどり、風が流れ、沢の音がきこえた
大人達も、またワイワイと冗談をいう普段の明るい山男にもどっていた

駐車場に戻った時、さっきの不思議な体験を話すと、大人達は少し真顔になってから
皆「出たね!」「あぁ出た出た!」「近かったなぁ!」「直ぐ隣だった!」と
俺の頭をガシガシとなでながらゲラゲラと笑っていた

自分が大人になって、山奥でひとり渓流釣りをしていると
沢の音が突然、遠くに感じるような、消えるような事がある
そんな時は、予定を切り上げて一目散に下山することにしている
ふと、こどもの頃を思い出すと、怖くなる

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