峠に呼ばれて

146 名前:1/2[sage] 投稿日:04/12/17 07:47:08 ID:f7I+2vKN
先日の台風の日に同僚が隣県に出かけていた。 
帰りは高速を通らず一般道を通って帰ってきていたのだが、 
その一般道の途中、地元では割と有名な幽霊の出るという峠がある。 
峠に行くにはその一般道からも少し外れた方向に行かなければならないのだが、 
何を思ったのかその同僚、帰り道とは違うその峠の方の道に入り込んだらしい。 
時間は夜中の1時。車の中はその人一人。 
知っている道しか普段絶対に通らない、堅物の人間の同僚。 

「あー○○峠だ、と思ったらそっちの方に指示器出して曲がっちゃったんだよね。」 

大雨大風真っ暗闇で視界はゼロ。 
入って早々我に返り、何でこんなトコに入っちゃったんだと後悔したらしい。 
が、後の祭り、Uターンできるほどの道幅もなく、対向車が来るとギリギリ何とか対向出来るか出来ないかと言うくらい。 
時速40kmで走りながら、対向車が来ないことを祈りながら走っていた。 
その時、この峠の噂を思い出したそうだ。 
曲がりくねる山道の向こうから対向車が来るライトが見えるので追い越しスペースで待つが、 
いつまで待っても車は来ないとか。 

そう思った途端、ルームミラーやサイドミラーを見ることが出来なくなった。 
ときどきちらっと見ると真っ暗な闇しか映っていない。 

「何も考えずに入っちゃったからさ。絶対呼ばれたんだ、と思ったよ。初めて通る道で道も解らないし。」 

強くなる雨脚、いつまでも抜けない峠、ずっと曲がりくねる道・・・・。 
緊張と恐怖の限界に達した同僚は思わず、 

「いやー迷子になったんだーと思ったら思わず、犬のおまわりさん歌っちゃってさ。大声で。」 

一度大声で歌い始めたら興に乗ったのか恐怖心を振り払うためか、 
童謡をメドレーで壊れた様にシャウトしながら運転したそうだ。 
5曲目が終わる頃に峠の終点が見えて、同僚は何事もなく無事に峠脱出、 
何とか途中で合流した国道で無事に家まで帰れたらしい。 

「上手く呼んだのはいいけど犬のお巡りさんとか歌ってるしコイツ、アホちゃうんか、と思われたから無事に帰れたのかもしれないな」 

実害の無かった同僚は笑っていたが、いつもここを見てる俺は「それ絶対呼ばれてるよ・・」と思った。   

前の話へ

次の話へ