ぬいぐるみとテーブルセット

502 名前: 灰皿 ◆RxRt4/Lex. 04/02/06 23:38
ある雨の午後、不思議なものを見つけた。 
それは仕事で移動する時に使う、ちょっとした抜け道のような山あいの道だった。 
ときどき通るその道は、幹線道路の渋滞を避ける峠道につながる寂しい道。 
走行中にふと右側の路肩を見ると子供用のプラスチック椅子に座ったクマのぬいぐるみが見えた。 
道路と平行してぬいぐるみの横に小さなテーブルがひとつ。 
そしてそのテーブルを挟むように大人も座れるレジャー用の椅子が道路に向かって置いてあった。 
最初は子供がオママゴトに使ったものかと思った。 
しかし、その場所の近くには民家などなく、道路ギリギリに置かれた椅子も不自然に思えた。 
数日後にその道を通った時には椅子もヌイグルミもなく、その事も記憶の中に埋もれてしまった。。 

何回かその道を利用し、数週間経った雨の朝、また同じ場所で椅子とテーブルとぬいぐるみを見た。 
あいかわらずクマのぬいぐるみは、雨に濡れ虚空を見つめていた。 
誰がなんの為に・・と思ったと同時に妙な胸騒ぎがした。 
だがその時はその胸騒ぎがなんなのかわからないままであった。 
その日からその場所が気になるようになったが、その後はそのテーブルセットもぬいぐるみも現れなかった。 
誰がなんのために?その道を通るたびにその疑問は膨れ上がっていった。 
子供の仕業にしては場所が変である。テーブルセットの奥は木が生い茂る山だった。 
物売りのあとだろうか?結局答えは出ないまま日にちだけが過ぎた。 

そして先日、雪が降った日はたまたま仕事の関係でその道を通ったのが夜も更けてからになってしまった。 
それまではなんとも思わなかったその道が妙に不気味に思えた。 
例の場所に近づくにつれその不安は大きくなり自分が動揺しているのがわかった。 
そして暗闇のハイビームの中に浮かんだのは降りしきる雪の中のテーブルセット・・そしてぬいぐるみ。 
路面には雪が積っていたが反射的に強めにブレーキを踏んでしまった。 
ABSが作動するのがブレーキペダルを通じ脚に伝わってきた。 

ぬいぐるみの真横で停まりウインドウ越しに様子をうかがった。 
テーブル、椅子そしてぬいぐるみにも雪が積っていた。 
路面を見るが足跡らしきものはない。 
雪が降る前に置き去ったのだろうか?何の為に? 
不安ではなく自分の中に恐怖がひろがっていくのがわかった。 

理由のないの恐怖・・生理的嫌悪感というものだろうか。 
奥の山より誰かがこちらをうかがっているような気がする。 
逃げるようにその場をあとにした。 
翌々日に通った時にはかすかに残った雪の中にテーブルと椅子の脚の跡だけが残り、 
足跡のようなものは確認できなかった。 

そしてこの間の雨の午後・・ 
またそこにそれはあった・・ 
あいかわらずクマのぬいぐるみは虚空を見つめ、主のいない椅子もそこに・・ 
そして確信した・・その【何か】は雨の日を選びそこに来ているのだ。 


以上です 
オチがなくてスマソ 
実際の話なんでそんなドラマチックには・・ 
でも雨の日にそこ通るのマジでコエーよ 

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