当たりハズレ

108 名前: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/04/23(土) 01:55:19 ID:HZSm7jnN0
友人の話。 

機械部品の運搬中、山中に車を停めて弁当を開いていた時のこと。 
視界の隅に黒い物が踊った。 
烏だ。二羽の烏がゴミ袋のような物を突付いている。 

袋の口は縛られていたが、烏は器用に嘴を使ってそれを解いていく。 
感心しながら眺めているうち、ついに袋は口を開いた。 
烏は一緒に中を覗き込み「チェッ!」「ハズレ!」と口々に文句を垂れた。 
思わず耳を疑った彼を尻目に、烏たちは羽ばたいて空に消えていく。 

後に残された袋が、風に吹かれて彼の方に口を向けた。 
袋の内から何かが彼を睨んでいた。薄い頭髪。無精髭。 
脂ぎった中年男の顔だ。歯を食いしばって目を剥いている。 

彼は転がるようにして車から降り、風に転がる袋を取り押さえた。 
拾い上げた袋の中に入っていたのは、只の紙屑と菓子パンの空き袋だけ。 

もし袋が当たりだったならば、一体中には何が入っていたんだろう? 
しばらくの間、そればかり考えていたそうだ。 

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