御堂の足音

915 :本当にあった怖い名無し:2010/11/30(火) 00:11:48 ID:P/AmtHQr0

実話なのでオチらしいオチは無いのと、長文になってしまったので、そのつもりで…
中学生の時、家がお寺というヤツがいた
2年の夏休みのある日、肝試しに来ないかと3人の友人と一緒に誘われた
その年の、お盆の最後の日曜に泊まりに来いと言うのだ
彼が言うには、昼間は法要で忙しいが夕方以降は御堂も空くので、みんなで御堂に泊まろうという事だった
但し、御堂の後片付けを条件に御堂の使用許可と全員の晩飯の提供の約束を親から取ったとも言った
単に御堂の後片付けの手伝いが面倒だったので俺達を巻き込んだようでもあったが、
「肝試し」という言葉に釣られて全員が行くことになった

当日は夕方から集合し、御堂の片付けを手伝ったあと、食べきれない程の料理と寿司を御馳走になった
夕食後はお寺の来客用の駐車場で持ち寄った花火でひとしきり遊んでから、御堂に来客用の布団を運び込んだ

夜の御堂は灯りを点けていても、鎮座している仏像の視線らしきものを感じたりと、独特の雰囲気があった
最初は他愛も無い雑談をしていたが、一応肝試しで集まったからと、ありきたりだが怪談をする事になった
まぁ、中学生同士の怪談だから噂話とかの類がメインになるので聞いた事がある話が多かったが、
御堂という特殊な雰囲気も手伝ってそれなりにゾクゾクとしたのを覚えている

よく、怪談をすると霊を呼ぶ、なんて話があるが、その時は特に怪現象が起きる事も無く時間が過ぎて行った
夜中も2時半を過ぎたあたりで、さすがにみんな眠くなってきたので「寝よう」という事になった
御堂の真ん中あたりに全員が横一列に並ぶ形で布団を敷き、電気を消して就寝した
俺は一番端の布団に入って目をつぶっていたが、なんとなく寝付かれずに暫くは起きていた

布団に入ってどのくらい経ったか、正確な時間までは覚えていないのだが、ウトウトとし始めた頃にふと気付いた

足音がする

御堂は板の間になっているのだが、その板の上を裸足で歩いているような音がするのだ
歩き方というか、歩く速度はかなり遅い
1歩進んでは2秒ほど間が開き、次の1歩を進んだら又2秒ほどの間が開く…
もの凄いゆっくりとした速度なのだが、音は確実に聞こえる
どうやら自分の足元、御堂の入口の方から聞こえる事まで感じ取れた
一瞬、俺がウトウトとして半ば意識が落ちている時に、友人の誰かが起きて悪ふざけをしているのかと思った
そう思って布団から上半身を起こして足音の方を見たが、誰も居ない
電気は消していたが、御堂に近い道路の街灯の光が窓に挿し込んでいて、うっすらと御堂の様子は見てとれた
確かに誰も居ないし、気のせいだったのか足音も消えたようだった
不思議に思いながらも、又布団に入って寝なおす事にした

ところが、暫く経つとやはり足音が聞こえる
さっきと同じ歩き方で、「ヒタ……、ヒタ……、」と確かに聞こえる
もう一度御堂を確認するが、やはり誰も居ないし、横を見ると友人たちが全員揃っているのが分かった
で、又布団に入って暫くすると、またまた足音が聞こえるのだ…
俺は段々、本気で怖くなってきた
足音は入り口付近から本堂正面の向かって右側を壁伝いに歩いているように聞こえる
布団からは出ずに、顔だけを動かして足音のする方を見るが、やはり姿は見えない
そうこうしているうちに、足音はついにぐるりと御堂を一周してしまった
が、足音は止まらない
そのまま同じペースで二周目に突入した

が、さっきと何かが違う

相変わらず姿は見えないのだが、良く聞いていると足音が二重に聞こえるのだ
どうも「2人分」の足音が聞こえる…という事に気付いた
頭の中で(増えた…!)と思った瞬間に、前身に鳥肌が立つのを感じた

ところが…

少し足音が大きくなったように感じた
(まさか近づいてきたのか?…)と思い、さっきより更にゾッとしたが、なんとなく近付いてくる感じがしない
で、よく足音を聞いてみると、さっきまで「2人」だと思っていた足音がどんどん増えていたのだ
(…!)
気が付くと御堂の壁際を無数の足音だけが、ゆっくりとぐるぐると廻り続けているのだ
5人や10人では無い… 御堂の周りを取り囲むくらいの大人数に聞こえる!
それに気付いた時は、本当に心臓が止まるかと思うくらいにゾーッとした…
あまりの恐怖に隣に友人が寝ている事すら忘れて、ただ布団をかぶってガタガタと震えていた…

いつのまにやら眠ってしまったのか、気が付くと御堂に朝日が入り込んでいた…

完全に寝不足気味なのだが、直ぐに未明の体験を思い出して友人たちにそれを話した
そうしたら、俺の隣に寝ていた友人が同じ足音を聞いていたと言うのだ
彼によると、足音に気付いたのは恐らく俺と同じ頃だったようだった
俺が足音のする方を見る為に、布団から起きる気配を背中越しに聞き取っていたらしい
ところがその友人は、その時点で既に金縛りにあっていたので声も出せなかったと言うのだ
俺が隣で何度も足音の方を確認する為に布団の上で起き上がったりする度に、
必死で助けを求めて体を動かそうとしたがピクリともせずに、声も出なかったらしい
俺はそんな事には全く気が付かず、隣でガタガタ震えていたのが関の山だったようだ…

そんな俺達の話を聞いていた寺の息子である友人は事も無げに言った
「お盆の時は、毎年そうやって霊が来るんだよね~、新盆の人達が帰ってくるらしいんだわ
でも、こういう話は言ってもなかなか信じて貰えないし、感じない人は感じないからね~w
試しにと思ってお前等を誘ってみたんだけど、2人も感じるなんて凄いよ~w」
と、あっけらかんとして言い放った…

その日以来、霊魂を信じるようになった

と言うより、ごくごくたまになのだが、「そういったモノ」を感じるようになってしまった…

皆さんも実家がお寺という人が居たら、お付き合いには注意した方がいいかも…
俺のように、巻き込まれて感じるようにならない方がいいと思うから…

俺は未だに慣れないし、全く何も感じない体質になりたいよ…

以上

長文に付き合ってくれた方々に感謝

957 :本当にあった怖い名無し:2010/11/30(火) 20:44:26 ID:P/AmtHQr0
昨夜、>>915~>>918の長編を書いた者です
>>919の方が、俺自身が正確な時間を覚えていなかった事と、金縛りにあった友人が足音に気付いた時間帯が
恐らくは同じ頃だった、と言った事を疑問に思っているように見受けられるので補足説明を少し

金縛りにあった友人の話によると、足音に気が付いた時に咄嗟に俺を含む周りの友人達に教えようとしたらしい
ところが声が出ない
それどころか体も動かない
(金縛りだ!)と彼が思って間もなく、隣で寝ていた俺が動く(上半身を起こした)音を背中越しに聞いていたとの事
最初は単に俺が寝返りをうったのか、それとも起きているのか分からなかったが、
それでもとにかく金縛りを解こうと必死だったらしい
しかしどんなに頑張っても金縛りは解けず、指一本動かせないような状態だったらしい
そんな中でも足音は確実に聞こえる…
彼は金縛りと足音の、ダブルの恐怖に晒されて相当に怖かったらしい
そんな中でも意識はハッキリしていたので、俺が隣で何度か動いているのは分かっていたらしい
俺が隣の布団で動く度に助けを求めようとしたらしいが、全く動けず、声も出せず
そのうちに金縛りに逆らおうとした事による疲労感が大きくなり、知らない内に寝てしまったと言っていた

彼が足音に気が付いた直後には金縛りにあっていて、程なく俺が起き上がる音を聞いている事から、
「大体同じくらい」のタイミングで足音に気が付いた、という結論が出たんだ

因みに俺が、正確な時間が分からなかったのは、中学生当時の俺は腕時計を持っていなかった為と、
御堂にも時計が無かった為
寝る頃の時間が分かったのは、寺の息子と別の友人(何も感じなかったうちの1人)は腕時計を持っていたから

他にも体験談は幾つかあるので、それはいずれまた…

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