ある夏の出来事

320 :ある夏の出来事1/4:2007/02/06(火) 09:38:59 ID:shOTppNX0

数年前に本当にあった話。

俺の実家は父、母、俺、5歳年下の妹の4人家族なんだけど、どうもうちの女家族は霊感があるみたいなんだ。
と言っても日常的に霊を見るとかそんな大それたレベルじゃなくてたまに霊がいることを感じるとか、その程度ね。

母親が、「感じる」体質だってことは、俺が幼い頃から色んな体験談を聞かされていたから知ってたんだけど、妹もそういう体質だってことは、数年前にある出来事が起きるまで俺は知らなかった。
これは、そのある出来事のお話。

当時大学1年だった俺は夏休みを利用してド田舎の実家に帰省していた。
そんなある日のこと。
家族での夕食を済ませ、暇を持て余していた俺は妹に
「久しぶりにバドミントンでもしないか?」と声をかけた。
当時中3だった妹は、バドミントン部に所属していて
まだ俺が実家に住んでいた頃には、よく妹の練習の相手に付き合ったものだった。
「久しぶりだね~。いいね、やろう!」妹が言った。

そして俺と妹の2人は家の前の路上に出てバドミントンを始めた。
時間は確か夜8時をまわったあたり、当然、日は完全に暮れていて家の灯りと、家の前にある1本の街路灯の灯りだけが頼りだった。
ド田舎なので車は殆ど通らない。

妹はその時期すでに部活を引退していたし、俺も大学入学と同時に
一人暮らしを始め、体を動かす機会も少なくなっていて完全に体が鈍っていた。
「腕が落ちたんじゃないか?」
「最近どうよ?」
なんて他愛の無い会話をしながら久しぶりの運動を楽しんだ。

そんな時あの出来事が起こった。
バドミントンを始めて子一時間経ったくらいだろうか、
突然妹が何も言わずに猛ダッシュで家の中に戻っていったしまったのだ。
あまりに突然の事に俺はあっけに取られたが、ただならぬ雰囲気を察し、すぐに妹の後を追った。

玄関で妹が座り込み泣きじゃくっていた。
状況が理解できなかった。
意味がわからず、少し気が動転していた俺はとりあえず「どうした?何があった?」と聞きまくった。
この妙な事態を察した両親も茶の間から玄関に出てきた。
「一体どうしたんだ?」
「どうせまた〇〇(俺の名前)が△△(妹の名前)を泣かせたんだろう」
「違うっての!」
妹は完全に号泣してしまっていて喋ることができない。
とりあえず俺たちは妹が落ち着くのを待った。

・・・
しばらくして妹も落ち着いてきたので、一体何があったのか再び質問した。

そして妹は語りだした。
「実はバドミントンをやり始めてすぐに、私の後ろの方から、生きてる人では無い何者かの気配を感じていた。
自分との距離は100メートルくらい離れてた。
こういう気配を感じるのは日常茶飯事だから特に気にも留めなかったし、お兄ちゃんにわざわざ言うこともしなかった。
ただその気配の主は背丈が低く、子供か老人のような雰囲気だということはわかった」
そこで俺は妹も感じることが出来る体質なんだと初めて知った。
妹は続けた。
「それで気にも留めずにしばらくバドミントンをやっていたんだけど
ふと気が付いたらその気配が自分のすぐ横に来ていた。瞬間移動?走ってきた?
どっちかわからないけど、遠くにいると思っていた気配がいきなり自分のすぐそばにいたからとにかくびっくりした。
だから怖くなって逃げた。
怖くて泣いてしまった」

背丈が低い、子供のような雰囲気と聞いて、俺は思い当たる人物があった。
それは父親の姉だ。父親の姉は小学校5年生、11歳の時にある事故がきっかけで亡くなっていたのだ。
「もしかしたら□□おばちゃん(父の姉の名)が来たんじゃないかな?」
みんなにそのことを話し、特に誰も反論すること無く、自然とそれにみんな納得した。
その日は家族みんな妙に神妙な気持ちになって床に就いたのを覚えている。

幼くして亡くなった父の姉が、楽しそうに遊んでる俺たちを見て、羨ましくて近寄ってきたのではないか?と結論付け、このちょっと奇妙な出来事は一応の幕をおろしたのだった。

ちなみにその気配が近寄ってきた道を逆に辿って行くとすぐに彼女が眠るお墓がある。
ま、気配の正体が彼女だと結論付けるのは早計かもしれないし、それを確かめる術も無い。
11歳という遊びたい盛りに亡くなってしまってさぞかし無念だったろうな。
哀しいながらも、今となってはひと夏のちょっとした不思議体験、いい思い出だ。

ちょっとフィクション臭い文体になってしまったけど、ほんとにあったお話。

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