必ず百話目にはたどり着けない

155 :本当にあった怖い名無し:2006/12/30(土) 01:53:33 ID:R6K6u/OD0

 ほんのり怖いと言うか、不思議な話を。

 今ではあまりにも陳腐ゆえに聞かなくなりました、いわゆる学校の怪談。
 皆様もよくご存知かと思われます。
 私の田舎の母校にも一応そのような話はありまして、やれ保健室のベッドに寝ていると誰かが覗き込んでくる。だの、屋上に続く階段の数がどうのだの、根も葉もない噂が囁かれておりました。
 当然、あまり信じる人間もおらず大抵の生徒は小話のネタくらいに受け止めており、事実話のほとんどはそう言った類のものでありました。

 ただ、一つだけ私は友人達とともに身をもって体験した話がありましたので、それを書かせていただこうと思います。
 稚拙な文ですが、どうぞご容赦を。

 私の母校には、丁度学校全体の鬼門に当たる場所に木造の建物が建っております。
 かなり古い建物でして、一階は華道部や茶道部の使う茶室や会議室、それと教職員用の宿泊室があり、二階は40名程度が宿泊できる大き目の和室と言う構造になっております。
 会談の内容はいたってどこにもあるような話でして、その施設で百物語をすると必ず百話目にはたどり着けない。
 なぜなら、鬼がやってきてそれを邪魔してしまうからだ。というお話でした。
 当然、私もこんな話は信じてはおりませんでした。どうせ途中で面倒くさくなったか、怖くてやめたから言い訳として作ったのだろうと。
 私の友人達も同意見でして、ならば実際に百物語をやりきってしまおう。という話になったのでした。

その施設は普段から運動部などの合宿の際に使用されており、私たちも例に洩れずそこに寝泊りすることとなりました。
 そして、私を含め4人の生徒が深夜に一階の茶室に忍び込み、そこで百物語を行ったのでした。
 元々、そのての怖い話には事欠かない4人組でしたので滞りなく百物語は続いていきました。
 途中で部屋の四隅の蝋燭が倒れて慌てたり、監督の先生が見回りに来るのを声を潜めてやり過ごしたり、それなりに面白く進んでおりました。
 ただ、期待したほど実際に怖いことが起こるわけでもなく、半ば拍子抜けしはじめた頃、私たちは不意に部屋の中に自分達以外の気配があることに気付いたのです。

四人が正方形を作るように座り、私は丁度入り口から部屋の奥に向かって座っていました。
 その気配の元、私にはかなり大柄な男性に見えたのですが、彼は私の真正面ぐらいに腕を組んで立っており、微笑んでいるように見えたのです。
 他の三人もすぐに彼に気付き、一斉に彼の方を向きました。
 部屋の奥には小さな庭園に抜けるガラス戸がありますがしっかりと鍵はかかっており、それ以外の入り口は私の後ろの廊下にしか無いはずなのです。
 私たちは突然そこにいた彼に絶句したまま阿呆のように見つめていましたが、彼は微笑んだまま動こうとしません。
 そしてそのままどのくらいたったのか、彼は突然低い声で喋ったのでした。
「あと、どんだけな?」
 私は戸惑いながら、百物語の残りの蝋燭を数えました。
「えっと……22です」
 残った蝋燭の数は22本。つまりあと22個の怪談で終わる筈でした。
 すると彼はその22本の蝋燭を両手で掴み、一気に火をつけてこう言ったのです。
「ほしたら、これで終いや。はよう寝ないかんよ」
 彼はそのまま、私のすぐ横を通って出て行ってしまいました。
 私たちは、彼が出て行ってしまうのをただぼうっと見ていました。そして、我に返り慌てて追いかけたのですが、もうどこにも彼の姿は見当たりませんでした。
 結局彼の正体は分からずじまいで終わり、茶室に忍び込んでいた私たちは後で宿直の先生にこっぴどく怒られました。
 ちなみに私は男性に見えたので便宜上「彼」と呼称しましたが、どうも友人にはそれぞれ別のものに見えていたらしいです。
 また共通しているのは「彼」が穏やかに微笑んでいたことと、喋った大まかな内容(口調は違ったようです)、そしてどのような顔だったか分からなかったことでした。 
 これにて以上です。乱文乱筆失礼いたしました。

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