とある占い師

425 :本当にあった怖い名無し:2006/07/09(日) 22:51:40 ID:6JrnqT+X0

怖い話というわけでもないが、うちの母ちゃんの話。

うちの母ちゃんは親父と結婚するとき、年の差とか親父の性格とかのせいで猛反対された。
親戚は結婚するなと言い、母ちゃんは結婚すると言って、お互い譲らなかった。
親戚いわく「あんな人と結婚しても不幸になるだけ」、母ちゃんいわく「絶対幸せになれる」で平行線だった。
未来のことなんてわかるわけないし、決着のつく話じゃなくて、母ちゃんと親戚たちはかなり険悪な雰囲気になったらしい。

そんなある日、母ちゃんと親戚たちの仲裁役をしてくれていた伯母さん(母ちゃんたち兄弟姉妹の長男の嫁さん)が、母ちゃんをとある占い師(別の呼び名があったがやってることは同じ)のところに連れて行った。
伯母さんの実家のある地域では知られた人で、かなり当たるという噂の人だったらしい。
「占い師さんに結婚後のことを聞いてみて、もし幸せなものだったら親戚たちに何とか結婚を認めさせてあげる。でも良くない将来だったら諦めなさい」
という感じに、母ちゃんは伯母さんと約束して行った。
伯母さんの出身は房総半島の内縁の海に近いところで、その占い師の家は海風の吹く、何も無い原っぱの中にぽつんとあったらしい。

占い師はしわくちゃのばあさんで、白い着物みたいのを着ていて、ぼろい小さな家の中は薄暗く、変に煙っていたらしい。
でっかい石とか、骨(たぶん魚)を積んだよくわからんものとかがあったりもしたらしい。
ぶつぶつ何か言ったりして、その占い師は母ちゃんの結婚後のことを占った。
その結果、一年後に出産、その一年後にまた出産、その五年後にまた出産、その七年後に夫が原因で離婚、と母ちゃんは言われた。
総じて苦労するとも言われたという。

そんな良くない結果だったけど、母ちゃんはやっぱり結婚したいと伯母さんに頼み込み、伯母さんは仕方なく占いの結果を偽って親戚に報告して、親戚一同に結婚を認めさせた。
それから今年で三十年になるけど、占い師の言ったことは年数も含めて全部当たった。
子供を三人生んで、親父のアル中が原因で離婚、母ちゃんは一人で三人の子供を育てあげました。

俺が「伯母さんの言うこと聞いてれば良かったのに」と言うと、「そしたらあんた生まれてなかったでしょ」と笑われた。
その辺はどうでもいいけど、本当に当たる占いってあるんだなあと思った。
伯母さんの話だと、占い師は、それから何年後かに亡くなったらしい。
母ちゃんが占いをうけたのは、今からちょうど三十年前の1976年の秋くらい。
長期休暇に親戚の家に行った時伯母さんに聞いたらほとんど同じ話をしてくれたし、母ちゃんが俺に作り話をする理由も無いので、本当の話だと思う。

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