母親ミーシャと娘サラ

136 :本当にあった怖い名無し:2006/06/29(木) 18:13:50 ID:ssMW8TeGO

昔のヨーロッパのある国での話。

裕福なフランス人の母親ミーシャと娘サラが、2人で世界旅行をしていた。
彼女らはヨーロッパの色々な国をまわって、イタリア西部へとやってきた。

ホテルに着いたときにはもう辺りは暗くなっていた。

2人はとても疲れていたので、チェックインすると
そのまま自分たちの部屋に直行した。

部屋はとても広く、居心地が良さそうだった。
サラの部屋と母親の部屋の間には、共用のバスルームがあった。

廊下に出なくても室内からバスルームへ、そしてその隣の母親の部屋へ
お互いに行き来できる構造になっていた。

「サラ、お腹は空いてる?何か軽食を頼もうかしら」
「ううん、いらない。それよりも早く寝たいの」
「そうね。じゃあ今日はもう寝ましょう。明日が楽しみだわ」
そう言うとミーシャはサラにおやすみのキスをした。

次の朝。
サラが目覚めたときには、もう日が高く昇っていた。
時計を見ると10時を少し過ぎている。

サラはバスルームに行き、シャワーを浴びて着替えた。

鏡の前で身だしなみを整えているとき、
ふとサラは母がもう起きているか気になり、
母の部屋から何か物音が聞こえないか耳を澄ませてみた。

しかし何も聞こえない。
サラは、きっと母は疲れてぐっすり眠っているのだと思い、
起きてくるのを待つことにした。

どれくらい待ったか、もう正午近いというのに
母は起きてきた気配がない。

お腹も空いてきたので、待ちくたびれたサラは母を起こしに行った。

バスルームから母親の部屋を開けた。


そこには母はいなかった。

それどころか、ベッドに母が寝ていた形跡はなく、
母の旅行鞄もコートも消えていた。
母がその部屋に泊まったという一切の痕跡がなかったのだ。

サラは慌ててフロントに電話をしたが、つながらない。

サラは焦ってフロントまで駆けていった。

「ママはどこ!?ママが部屋にいないんです!」
「落ち着いてください、お客様。どうされたのですか」
フロント係は言った。

「ママ、ママがいないんです!!荷物もなくなってます!!」
「お待ちください、そのお母様とはどなたですか」
「私のママよ!!昨日一緒にこのホテルに泊まったの!!」
「おかしいですね、確かにあなたは昨晩チェックインされていますが、お一人でしたよ」
「そんなことはないわ!!2人で旅行をしていたのよ!?」
サラは気が狂いそうだった。

しかしフロント係が差し出した帳簿は、サラに非情な現実を告げていた。


そこにはサラのサインしかなかった。


あまりの展開に、とうとうサラは気を失ってしまい市内の病院へと運ばれた。
結局母親は現れず、サラは故郷の病院へ移された。

この不可解な失踪について、サラとその母の親族が調査を始めた。
そしてその結果、残酷な事実が判明した。

2人がイタリアのホテルに着いたあの晩、
母は赤痢を発病したのだった。
ホテルは医師を呼び手当てをしたが、
その甲斐もなく母は明け方前に死んでしまった。


そしてあろうことか、ホテルのオーナーは朝までに
死体を運び出し、さらに荷物や母親の部屋にあったものは全て焼いてしまい、
壁紙も張り替えてしまったのだ。

ホテル側は完璧に母親の宿泊した痕跡を消し去り、
娘への対応も事前に従業員に伝達していた。


ホテル内で赤痢で死者がでるなんて。
評判が落ちることを恐れたホテルのオーナーが、
母親が宿泊した事実自体を消そうとしたのだった。


全ての真相を聞いたとき、娘は母親の哀れな末路を思い涙したという。

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