村上春樹の「辺境・近境」

496 :1:2006/06/08(木) 21:22:25 ID:PqxKE4+g0

10年くらい前の話だけど・・・

村上春樹の「辺境・近境」って本を読んだのさ。

彼が旅したところに関するエッセイ集なんだけど、その中に
ノモンハンに行った話が入っていたんだ。
どうも彼は昔から「ノモンハン事変」に非常な興味を引かれているらしく
実際に自分の目で戦場を見てみるべく、モンゴルのハルハ河畔にまで出かけていった。
そこは乾燥した気候のせいか、60年前の戦争の残骸(戦車とか、砲弾とか)が
そのまんま錆びもせずに生々しく残っていた。
彼はそこに落ちていた砲弾の断片を、そこで戦死した日本兵のことを思い浮かべながら
宿に持ち帰った。

その晩、彼が寝ていると、深夜、宿全体を巨大なゆれが襲った。
ベッドから投げ出された彼が驚愕してあたりを見回すと、先ほどの揺れはどこへやら
部屋の中には何も倒れていないし、宿全体も寝静まったまま。
地震なんて起きていなかった。
冷静になった彼はだんだんと悟ってくる
「激しく揺れていたのは部屋ではない。自分自身だったんだ」と。
身も世もない恐怖に全身が包まれた彼は、夜明けが来るのをひたすら待ち望んだ

その本をベッドで読んだあと、そのまま電気を消して寝た。

・・・と、深夜3時ころ、突然「ガーン」という衝撃を体に受け、ビクッとして目を覚ました。
ベッドは部屋の右隅にあり、俺は右側(壁側)を向いて寝ていたんだけど
目はつぶったままであるにも関わらず、部屋全体が真っ赤に照り光っているのが
ありありと「見える」んだ。

そして、背中を向けた左側(部屋の真ん中)に、赤い光の柱のようなものが立っているのが
感じられた。
幽霊、とかいうかそけき感じとはまったく違う・・・凄まじい存在感を主張しているんだ。
そしてそれは、明らかに「人」なんだよね。
身体や人格がまったく抜け落ちた、でも人以外にはありえない強烈な思念。
なんだか体が「恐怖そのもの」の中に投げ込まれた感じがして、
体はこわばるし、あまりの恐ろしさに身動きをとることも出来なかった。

と、しばらくしてその「赤い光」がふっと消えた。
こわごわと左を向いて、枕もとの電気スタンドを点けてみたんだけど
部屋の中は何の異常もない。
だけど、体の中にはさっきの異常な恐怖感がありありと残っている・・・
結局、電気を点けたまま夜が明けるのを待ったよ。


ありきたりな金縛りと言われるかも知れないけど、でもその時まで金縛り体験はなかったし
それ以来もいまだこんなことは経験していない。
なんだったんだろう、いったい・・・

本を読んだその晩に、その本に似たようなした経験をしてしまった、というお話でした。
オチはありません(`・ω・´)

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