母と住むマンション

355 名前:1/2 :2006/04/22(土) 19:23:23 ID:LdWfdRi80

小学校のころの話です。

私の家は私が幼い頃に父が亡くなり母子家庭でした。
そのころは、父方の祖母と母との折り合いがあまりよくなく、学校は祖母の家がある学区の学校に
通っていたのですが、家は祖母の家から電車で10分ぐらい離れたところに母と住んでいる、とい
う複雑な生活をしている ちょうどそんなころ。

その日は兄が祖母の家に泊まって、母の家には母と私の二人だけでした。
子供部屋には兄と私のベッドが一つずつあり、ひとつのベッドは空いたままです。
空いたベッドにはふとんも敷いておらず、ただただ置かれているだけでした。

私と兄は二人兄弟でしたが、兄は母が住むこのマンションがあまり好きではないようで、ほぼ祖母の
家で生活していたのでそう珍しいことではありません。

母と住むマンションには、母が仕事を終えた夜の八時過ぎに帰り、その時間までは祖母の家ですごす
という生活をしていまして。
いつものように夜、母と共にそのマンションに帰りいつものように子供部屋に1人で眠りにつきました。


目を覚ましたのは、特に違和感を感じた、とかそういうのではなかったと思います。
豆電球をつけていたので、部屋はオレンジ色に染まっており。
何となく、目が覚めた、ので、体を起こし辺りを見回すと、空いている兄のベッドに人影があるのです。

電気もつけず、ベッドの前へ行くと、その人影が母であることに気づきました。
母がふとんもひかず、兄のベッドで寝ているのです。
半ば寝ぼけたまま、このままだと風邪をひいてしまう、と考え、母のふとんをとりに隣にある母の部屋へと
向かいました。

母の部屋の襖をあけると、目の前に母のベッドがありました。
が、襖を開けた途端、自分の目を疑いました。
母がベッドの中でふとんに包まれ普通に寝ていたのです。

では、自分の部屋にいる母は一体なんなのだ?

一瞬パニックになり、母を起こさないように気をつけながら、(起こしたら何だか怖いことになるような
気がしたので)そっと襖を閉め、ばたばたと駆け足で自分の部屋に戻りました。
自分の部屋の、兄のベッドにはやはり母が居ます。
隣の部屋で安眠をむさぼっている母と、今、自分の部屋にいる母との違いは服装だけでした。
顔も髪型も同じですが、隣の部屋の母はいつものパジャマを着ていて、今目の前にいる母はタンクトップ
に短パンという寒そうな格好。

そこまで認識するのが限界でした。
恐ろしさから自分のベッドのふとんに飛び込み、もう1人の母が眠るベッドに背を向けると目を閉じました。
恐怖でガタガタ震えながら目を閉じていると、聞こえるのです。

すっ…すっ…

足音が。
背を向けた兄のベッドから、部屋の入り口に向かっていく足音でした。
(こっちにはくるな!)
必死で願っていたら、そのまま寝てしまったようで朝になっていました。
勿論兄のベッドは空。誰も寝ていません。
母はいつも通りの母でした。
それからというもの、空の兄のベッドには誰も寝転がれないよう、毎日丹念におもちゃを散らかし、
それが成果を成したのか、もう1人の母が現われる事はありませんでした。

しかし、あれが母のドッペルゲンガーなのか、それとも違う何かなのか、今でも謎です。
ちなみに、あれから15年近くたちますが母は元気です。

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