イタズラ爺さん

858 :本当にあった怖い名無し:2007/08/25(土) 09:45:06 ID:fbzcGqOj0

今年は、去年死んだ爺さんの初盆だった。 
孫の中でも一番の年上の俺は、今回のお盆でも、
色々手紙のようなものを読まされたり、お寺に灯篭を取りに行って流したりと中々忙しく、
長い長い坂を上った先にある墓場に行って、掃除をしてきたときなんかは、
そのまま家に帰ってきて、しばらく動けないほど疲れてしまうのだった。

16日、お盆最後の日も前日と変わりのない熱さ。田舎なので、セミの鳴き声が家の中から聞こえてきたりした。 
俺はその猛暑の中、最後の墓参りを済ませ汗だくで帰ってくると、
仏壇があるお上に上がり、縁側の戸を全部開け放って倒れるように寝た。 
疲れていた俺は、爺さんの仏壇に脚を向けて寝てしまって居たのだが、
そんな事には気付きもしないで、大の字に体を投げ出して寝ていた。 

死んだ爺さんは、昔からじじいとは思えないくらい子供っぽくて、よく俺にいたずらを仕掛けてきて喧嘩になった。
昼寝をしている俺の額に氷をおいてみたり、ランドセルの中に大根なんか入れたりして、怒る俺をからかっていた。
また、根がそう言う性格なのか、爺さんは子供のように俺と遊んでくれた。 
一緒に玉虫を取りに行った時、婆さんの鏡台に土で作ったうんこを仕掛けたとき、 
爺さんは友達みたいに俺と一緒にはしゃぎ、怒られ、二人でしょぼくれたりもした。 
でも、そんなバカな事をしてくれる爺さんが、俺は密かな自慢だった。
一緒に遊んでくれる友達みたいな爺さんがおれは好きだった。 
そんな爺さんが死んで一年が経った。
葬式の時などは泣いたが、もう思い出す事はあっても、悲しいと思う事は減ってきた。 
爺さんも、俺が悲しむよりはそっちの方がいいんじゃないかと、俺は勝手に思っていた。 

ふと気がつくと、朦朧とした意識の中、なにかが聞こえる気がした。
これは、頭の上の方にある縁側の廊下の、ビニールで出来た畳が擦れる音だ。 
爺さんが帰ってきたのかな…と思う間もなく、頬に氷水を浴びせられたかのような、
ひんやりでは済まされないような冷たい感触。
俺は年柄も無く「わああ!」と叫びながら飛び起きた。
下を向いて頬があったところを見ると、キンキンに冷えたオロナミンCが汗をかいて転がっていた。 
「ばあさーん、ばあさん!起こすなら声くらいかけろよー」
廊下に向かって声をかけたが返事が無い。 
俺はお上の入り口にたってもう一度呼んでみたが、
俺の声がわんわんと変な反響を反してくるだけで、それ以外は何も聞こえない。 

玄関に行ってみると、俺と死んだ爺さんの靴がそのままになってる以外は、靴は出されていなかった。
そう言えば婆さんは、「親戚の家に行く」といってた気がする。 

狐につままれた気分になりながらもお上に戻ると、転がってたはずのオロナミンCがちゃんと立っていた。 
仏壇に近付いて、小さな爺さんの写真に「爺さんなのか?」と聞いてみた。 
当然爺さんはなにも答えなかったが、触れた写真たての下は、キンキンに冷えた水滴で濡れていた。 
「何だよ、死んでからもいたずらかよ」
噴出しながら見上げた遺影は、相変わらず鼻毛が出ていたが、
なんだか前より少しだけ、俺には笑った顔が楽しそうに見えた。

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