森の形

943 :聞いた話:03/12/16 00:56

学生に聞いた話。 

ある研究者が、海外の原生林を調査した時の話。 
現地の案内人が同行していたのだが、どういうわけか矢鱈に迷う。 
それを問い質すと、 
「ずっと人が入らなかったので、森の形が定まっていないんだ」 
といった意味の返事が、通訳を介して返ってくる。 

そんな馬鹿なことがあるか。 
そう考えた研究者は、地形や木の位置や形状に目印にして地図を作ろうとしたが、
すぐに、それが不可能であることを思い知らされた。 
小さな池ほどもある巨大な水たまりが、僅か数分で消え失せ、 
さっきまで大きく開けていた頭上の空間は、いつのまにか鬱蒼とした枝葉で覆われ、 
周囲の木立は、一寸目を離すうちに微妙に変化していく… 
刻一刻とその姿を変える原生林に、研究者は眩暈にも似た感覚を覚えたそうだ。 

後日、検証のために、同じ場所で時間を隔てて撮影した写真を見比べてみたが、 
互いに全く別の風景にしか見えなかったという。

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