あなたも待ってるの?

511 名前:本当にあった怖い名無し :2005/10/14(金) 22:21:37 ID:ryyEikq10

5年ぐらい前の話だけど。
肌寒くなってきたその日、横浜の、駅前のデパートの前で友達と待ち合わせしていた。
珍しく友達が遅れたが、そこは暇な学生のこと、ショーウインドウを眺めたり、
人ごみを眺めたりして、のんびり待っていた。

自分の他にも待ち合わせらしい人が何人かいた。

すると、1人のおばさんが、どこからともなく近寄ってきた。
黄色っぽいカーディガンか何かだったと思う。
膝丈のスカートで、今から思えばだけど、「街中にしては、ちょっと・・・?」
と思うような服装だった。

と言っても、極端に変でも汚いわけでもなくごく普通なんだけど、
絵に描いたようなおばさんという髪型、ファッションで、近所のスーパーなら
違和感を感じないような。
生活感あふれるような。

大きな駅前で、少しおしゃれした人が多い中では、なんとなく浮いていた。

「あなたも待ってるの?私も待ってるのよ。」

田舎から上京して間もなかった私は、怪しさに気付かなかった。
「ああ、都会にもこういうおばさん、いるんだ」と思った。
むしろ、少しホッとしたような。

「はい、友達を待ってるんですが。」

「あなたも待ってるの?私も待ってるのよ。ずっと待ってるんだけど・・・
遅いわねえ。」

「はあ。」

そこまで来てもまだ、「話好きな人なんだな。」ぐらいに思っていた。
しかし、2、3度同じことを言うと、おばさんはスッと向こうの方へ行く。
とことこ歩いて行ったかと思うと、また戻ってきて、

「あなたも待ってるの?私も待ってるのよ。あなたも待ってるんでしょう?
もう、本当にねえ・・・遅いわねえ、待ってるのに。」

だんだん、私も「おかしい」と気付き始めた。
すると、今度は、他の人にも(おそらく同じことを)話しかけているのに気付く。

「・・・の?私も・・・よ。・・・・ねえ。」

繰り返す。繰り返す。逃げられると、隣の人へ行く。
おばさんに話しかけられた他の人は、最初は応じるが、
しつこくなってくると、移動したりしている。

またおばさんが戻ってきた。

「あなたも待ってるの?私も待ってるのよ。ずっと待ってるのにねえ。
遅いわねえ・・・。」

おばさんは、誰を待っていたんだろう。

ちょうど夕暮れ時で、逆光にオレンジ色に染まったおばさんの笑顔、
愛想のいい笑顔・・・忘れられない。
熱心に話しかけてくる、その笑顔のわりには一度も私と目が合わず、
私の向こうを見るような目つきだったことも、今思い出すとほんのり怖い。

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