自分の家の隣

488 名前:本当にあった怖い名無し :2005/10/12(水) 02:02:17 ID:ZRu3Oqbz0

8年程前、自分の家の隣におじいさんとおばあさん、40歳代前の息子さんと
その息子で小学生2人の5人が引っ越してきた。
なんでも大阪に住んでいたそうだが、息子夫婦が離婚しておじいさんらの故郷で
あるこちらに引っ越してきたらしかった。隣同士でもあいさつするぐらいで近所付き合いはなかった。
そのうち毎朝のように隣から怒鳴り声が聞こえるようになった。叱りつける父親の声、逃げ回る子供の声。
朝から何をしでかしたんだろうと最初は思っていたが、毎朝なので心配になってきた。「ごめんなさい~暴力はやめて~!」
泣きながら逃げる子供の声に怒る父親の声と別におじいさんとおばあさんも子供に一緒になって怒っている声がする。
何が原因かは知らないが大人が誰一人かばってくれない状況に子供が置かれているのが他人事ながら心配だった。
隣の家の庭には缶ビールや酒の一升瓶がゴロゴロならんでいて、父親が酒乱では?とも思った。
結構悩んで、自動福祉局に電話しょうかとも思ったが、一度となりのおじいさんなり父親なりに
それとなくたずねてみようと思っていた頃の夏休みの終わりの晩。隣の家で泣き声が聞こえた。
表に出ると隣の家には忌中のちょうちんがさがっている。親戚らしい人たちの車が次々やって来た。
誰かが死んだ。誰が?今日は夏休みの終わり、ひょっとして子供のどちらかが自殺したんじゃないか。
そう思った。自分が早く何か行動していれば・・子供ではありませんように・・と祈るような気持ちで
その晩は眠った。夢をみた。隣の子供たちの父親が顔だけ出てきて、「すんません、死んだん私ですわ」と関西弁で言った。
目が覚めてすぐ、犬の散歩がてら隣と親しいおばあさんの家にいき、誰が亡くなったのか聞いた。やはり父親だった。
夏休みの最後の日に、子供二人とその友達を連れて川へ釣りに連れて行った帰り道にカーブでハンドルをきりそこねて土手に転落してしまったのだという。
子供たちは骨折などしたらしいが命に別状はなかったらしい。子供の自殺ではなかったが、たった一人の父親を亡くした子供達の気持ちを思うととても複雑だった。
朝の怒鳴り声は聞こえなくなった。やがて彼らも中学になり見るからにぐれておじいさん夫婦は手を焼いているようだ。
あの時彼らの父親が夢に出てきたことを考えると今でも不思議な気持ちになる。

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