深夜番組

890 名前:コピペ1/2 :2005/08/22(月) 22:39:53 ID:vmfUQmHB0
「深夜番組」 

夜中,私は一人でテレビを見ながらいつの間にかうとうととしていました. 
やがてふと気づくと,なぜか部屋の電気は消え, 
テレビの画面だけがぼおっと暗い闇に浮かび上がっていました. 

テレビ画面にはやたらと長い石階段が映っています. 
どこかの神社のようです. 
照明に照らされた部分だけが闇の中に浮かび上がり, 
石段の上部は暗い闇に飲み込まれています. 
それがなおさらこの石段の長さを印象付けます. 
まるで私が見るのを待っていたかのように, 
画面は石段の上へと移動しはじめました. 

画面にはまったく人が映っていません. 
ナレーションもありません. 
静かな暗闇の中,コツ,コツ,と足音だけが響いています. 

やがて石段を昇りきり,鳥居をくぐり, 
境内の森の中へとカメラは進んで行きます. 
しばらくしてカメラはふと止まりました. 
そして照明が落とされます. 
画面はほとんど真っ暗です. 
私は部屋の電気を点けるのも忘れて 
その真っ暗な画面を凝視しつづけました. 
蒸し暑い夜です. 
汗がぼたぼたと床に落ちます. 

かなり長い沈黙の後, 
さっと,白い影と明かりが画面上を横切りました. 

そしてまた沈黙が続きます. 

やがて,カーン,カーンと釘を打つような音が聞えました. 
数分間その音は続き,それが終わった後, 
また白い影と明かりが画面を横切りました. 

また沈黙. 

やっとすこしだけ照明がつき, 
カメラは先ほど音がした方へと近づいて行きます. 
私がテレビを見はじめてから人間の声はまだ一言も聞いてません. 

しばらくして,カメラはひとつの木へどんどんと近づいて行きました.その木の幹には藁人形が五寸釘で打ち付けられています.その藁人形へさらにカメラが近づく.そして…. 

見なければよかった. 

その藁人形には私の名が書かれ,私の写真が貼られていたのです. 

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