ミーティング用の資料

867 名前:1/3 :2005/08/21(日) 23:03:04 ID:vMFlZI9L0
その日は次の日行われるミーティング用の資料を作ってた。 
そのミーティングは社長以下上層部が出席するということでかなり気合が入った物だったが、前日になって急に資料作成とプレゼンを指示された。
入社して3ヶ月で大きな仕事を割り振られて大喜びだったのを覚えてる。 
6時頃からぞくぞくと人が帰って、夜の7時過ぎに課長が帰って俺一人になった。 
帰り際に課長が「もう遅いから早く帰りなさい」と声をかけていたが、後から思い返すと、こうなることを予想してたんだろうな…。 
 一通り完成して後は全体を見直して終わらせようとしたころ、だいたい8時くらいだったと思う。
 視界の端に動く物が入った。
 誰かが忘れ物でもして戻って来たのか? 
 でも扉の開く音がしなかったなと思って顔を上げた。 

一瞬何を見てるのかわからなかったし、目の錯覚かと思ったが見直しても消えない。
事務所の向こう側の天井を女が歩いてた。
女はスカート履きで肩までの髪。
足が天井にくっついてるのだから当然なのかもしれないが、スカートも髪も天井方向に重力を受けていた。
何かのトリックかと思い、天井と女の足との接点を見てみたが何かで吊り下げてる様子もない。
 腰が抜けたように動けない俺の元(の天井)に女がきた。
「こんばんは」そのとき女が軽く笑ってたのが強く印象に残ってる。
女はそのまま俺の横(の天井)を通ってもう一つの扉に行って扉の部分を通り抜けて出て行った。
壁通り抜けれるなら扉関係ないだろと引き攣って笑った。 
笑いながら猛ダッシュで女が入ってきた方の扉から事務所を出て、そのまま家に帰った。 

結局事務所の灯りもつけっぱなしで鍵もかけずに帰ったわけだが、それは守衛がやってくれたらしい。 
次の日出社すると課長にそういわれた。
厳しい叱責を覚悟していたが拍子抜けするほど軽いものだった。 
ミーティング用の資料も未完成でプレゼンも散々な出来だった。 
 で、今思うとおかしいことがある。 
①皆の帰宅時間が早すぎる。
暇なわけではなく、社員の半分くらいは6時くらいから出社してる。 
②資料も部屋も中途半端で帰ったのに周囲の反応が生暖かい。
まあこっちは新入社員だったからかも知れないが。 
これと課長の言葉を考えると、あれが出ることは社内では周知の事だったんだろう。 
周りの社員にそれとなく聞いてみたが誰に聞いても言葉を濁すばかり。 
 その会社はそれからすぐ辞めた。
明日から新しい会社に出社する。
自分にけじめをつけるために書いてみた。 

前の話へ

次の話へ