因縁

331 コピペ sage 2005/08/24(水) 06:09:50 ID:oA6SpWUX0
某blogからのコピペ。 

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 2002年頃、とあるOFF会でO君から聞いた話。 

 大学生で時間を持て余していたO君は、その暇な時間を存分に使って、いわゆる「個人ニュースサイト」を運営していた。 
ネット上の面白いニュースを、気の利いた短いコメントとともに紹介する類のサイトだ。 
ただリンクするだけだから簡単かというとさにあらず、毎日の長時間のネット閲覧は欠かせないし、 
他の個人ニュースサイトとネタがかぶらないように常にアンテナを張っている必要がある。 
まだ現在のようにアフィリエイトが盛んな時期でもなかったから、別に金銭的な見返りがあるわけではない。 
それでも情報の海にどっぷりと浸かるような感覚は麻薬的だったし、 
同じ個人ニュースサイトの管理人とのオンライン/オフラインでの交流も楽しかった。 
 O君が自分のサイトを始めたのは2001年の後半。当初はアニメやマンガ関連のネタを取り扱っていたが、 
他の個人ニュースサイトとの差別化を図るため、英文科在籍の語学力を駆使し、 
海外の面白いニュースを簡単な翻訳とともに紹介することにした。 
その頃から次第にカウンターの回りがよくなり、 
「大手」と呼ばれる個人ニュースサイトが「情報元」としてリンクを張ってくれるようになった。 

「あれは嬉しかったなあ。初めて●●●さんにリンクしてもらったとき、 
ほんとにびっくりするような数の人が来てくれて」 
 ニュースの収集にも俄然身が入った。あるとき、アメリカのネットオークションサイトに 
出品された変なモノの特集が評判を集め、 
かつてないほど多くの個人ニュースサイトからリンクを張られた。 
キリストの顔(に見えないこともない焦げ跡)が浮かんだトーストとか、 
ハリウッドスターの半径1メートル以内で収集した空気を入れたビニール袋とか、 
凶悪な連続殺人犯が逮捕される直前に食べていたフライドチキンの残骸(冷凍保存されたもの)などなど、 
世にもくだらない品物が堂々とオークションに並んでいるのを紹介したものだ。 
もちろん出品している人のほとんどはジョークのつもりなのだろう。 
そしてそんなジョークに、入札という形で応じる人もいる。 
「あの特集は評判が良かったので、熱が冷めないうちに第二段をやろう、と思ったんです」 
 今度は海外ではなく日本のオークションサイトから「ネタ出品」を探そう、とO君は考えた。だが、国民性の違いか、 
あからさまな「ネタ」の出品はなかなか見つからなかった。ただ、故意ではなく天然なのか、 
そんなもん出しても誰も買わないだろう、というようなおかしな出品はいくつか見つかった。 
「海外じゃなく日本国内のオークションだし、 
ほんとに天然の人を晒し者にするようなことはちょっとマズいかなあ……とは思ったんですけどね。 
でも、その頃はアクセス数を稼ぐことにばかり考えがいっちゃって」 
 結局、O君は「ネタじゃなく天然のアホオークション? in JAPAN」というような悪ノリっぽい紹介で、 
いくつかのオークション出品ページにリンクを張った。 

 残念ながらこの第二段はさほど反響を呼ばず、一週間ほどしてもう半ば忘れかけた頃、 
O君がサイトで公開しているフリーメールのアドレスに一通のメールが届いた。 
送信者は知らないアドレスだった。メールにはこう書かれていた。 

「私はわるいことしてません。こまります。すぐにリンクをやめてください。」 

 すぐには何のことかわからなかった。「トップページ以外はリンク禁止!!」 
と大書きしているようなサイトにはあえてリンクしないようにしているし、 
そのサイトのことを馬鹿にするようなコメントも控えているはず…… 
そこで先日の「アホオークション」特集を思い出した。やばいなあと思いながらも、 
いったいどのリンクのことを言っているのかを確認するために返信した。 
返ってきたメールには、件の特集で紹介したオークション出品ページのURLが書かれていた。 
O君はトラブルにしたくなかったのですぐにその部分を削除し、お詫びのメールを書いた 
。あなたのオークション出品を紹介したのは、あくまで「ネタ出品」だと思ったからで 
、馬鹿にする意図はありませんでしたが、結果的にそう読めてしまう書き方になってしまい 
申し訳ありません……というような苦しい言い訳を添えて。 
 また返信がきた。 

「リンクをやめてもらってありがとうございます。 
あなたの言っていることの意味はよくわかりません。 
でも好き者どうしが趣味でやってることで、あまり注目されたくないです。それでは。」 

 「好き者どうし」という言葉が妙に気になったO君は、改めてその人物のオークション出品ページを見た。 
 その出品は「極上カツラ用にどうぞ・頭髪」と題されたもので、 
新聞紙の上に無造作にぶちまけられた髪の毛の写真が一点あるだけのものだった。 
自分で散髪した髪の毛を、血迷って出品してしまった天然ボケの人…… 
そう思ってO君は特集のネタのひとつにしたのだ。だが、改めて見てみると、
その出品にはちゃんと入札があった。それも2人も。 
「ちょっと目を疑うような値段まで競り合ってたんです。ただの髪の毛なのに。 
それで気になって、文句を言ってきた人の他の出品も見てみたんです」 
 その時点で出品されている20点ほどの商品、そのすべてが「頭髪」だった。 
 出品ページに掲載されている写真は、すべて違うものだった。 
 黒い髪、茶色い髪、白髪、金髪……色とりどりの髪はすべて、新聞紙の上に無造作にぶちまけられていた。 
 どの髪もとても長く、大量にあった。 

「思うんですけど、あれ、たぶん丸刈りにしないと、あの量は集められないんじゃないかな」 
 ほどなくして、O君は一部に惜しまれながらも自分のサイトを閉鎖した
 

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