お上がり下さい

110 :59-60:04/05/17 19:12 ID:3P9R08ZZ

親父が住職さんから聞いた話し
ある雪の降る日、深夜は1時か2時を回った頃、玄関をノックする音がする。 
住職さんが誰だろうかと出てみると、誰もいない。 
ただ、雪の上に点々と足跡だけが残されて、その足跡は玄関の前で消えていた。 
住職さんが「お上がり下さい」と言うと、濡れた足跡が玄関に入ってくる。 
その濡れた足跡は、やがて廊下へ上がり、 
まるで本当に人が歩いているかのような音を立てながら、本堂へ向かう。 
その時、本堂の扉が勢いよく「バンッ」と開くのだそうで。 
住職さんは、夜中にも関わらず、その目に見えない来訪者のためにお経をあげ、 
お経が終わる頃には、その気配も消えている。 
そして、翌朝、檀家の方が亡くなられたと連絡が入る。 
そういう事は、よくある事なのだそうだ。 
よくあったら困るけど。

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