鹿男

353 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/04/04 23:41

アメリカ人留学生から聞いた話。
彼がまだ幼かった頃、毎年夏になると友人の家族と山小屋に泊まっていたという。 
ある日の夕方、彼の母親は森の中を歩いてくる奇妙な姿に気がついた。

雄鹿の頭を持つ男が、山小屋に向かって歩いてきていた。

慌てて彼女は子供と小屋にこもり、しっかりと戸締りをした。 
鹿男は小屋のまわりを歩き回り、中の様子を窺っているようだった。 
カーテンの隙間から盗み見る鹿男の白いシャツには、どす黒い染みがついていた。 
どうやら彼は、鹿の頭部を切り取って自分の頭に被っているらしい。 
その手には手斧のような物が握られていたそうだ。

しばらくして鹿男は森の中に去ったが、母子は腰が抜けたようになっていた。 
直後に父が仲間と帰ってきたのでこのことを訴えると、ひどく驚いたという。 
彼らは小屋にいたる道の上に、頭を切り取られた鹿の死体を見つけていたのだ。

その翌日、彼らは山小屋から引き上げた。 
以来、その近くではキャンプをしないことにしたのだという。

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