ガラゴロ

953 :1/2:04/08/25 13:29 ID:2KXflomd

学生時代にアポイ岳に登ったときのこと。エゾライチョウをナマで見たり、 
ナキウサギの声を聞いたり感動を覚えながら、下りのルートに入って暫く 
した時、突然ガスがかかって視界があまり利かなくなりました。

天候が崩れるとイヤだなぁ、と思いながら仲間と下っていたのですが、 
ふと気付くと鳥の声も風の音も聞こえない、静まりかえった状況に。 
すると、遠くの方からガラゴロという音が聞こえてきました。

まずい、雷か? と先を急いだのですが、ガスはだんだん濃くなり、 
足下が岩場の為気ばかり焦ります。ガラゴロはだんだんと近付いて 
来る感じがしました。顔に冷たく湿った空気を感じ、これはいつ雨に 
なってもおかしくないという雰囲気に更に不安になりました。

皆黙りこくったまま下山を急ぎます。ガラゴロは相変わらず聞こえていて、 
徐々に音が大きくなってきます。あれ、この音は雷にしては途切れる事が 
無くて変だな、と思っていると仲間もそう思ったのか立ち止まって聞き耳を 
立てていました。
ガラゴロはますます大きく近づいてきます。雷? いや、何か岩でも 
転がってくるような大きな音だぞ? 皆で顔を見合わせ、何か言おうとした 
時でした。灰色の大きな塊が、下山道の先を横切って転がっていくのが 
見えました。

岩とも熊とも違う感じで、はっきりとは見えませんでしたが何か輪の 
ようなものでした。それと一緒に音も遠ざかっていき、ガスも薄れて 
きました。今のはなんだった? 岩か? それにしては音が変じゃ 
なかったか? 立ち止まって話していた私たちは、視界が戻った 
時に自分たちの立っていた場所に驚きました。

いつの間にか下山道をはずれて、ほんの数m先は崖になっている 
地点で立ち止まっていたのです。そのまま進んでいれば、崖から 
滑り落ちていたかもしれません。危ういところでした。

あれは山の神様だったんでしょうか。

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