鰐除けの柵

467 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/09/05 23:19 ID:qudfF4Sa

同僚の話。
出張で東南アジアに行った時のことだ。 
かなり山奥の村に滞在したのだが、道端にある奇妙な物が気になった。 
鉄条網で作られた柵なのだが、高さが異様に低く、彼の膝下くらいなのだ。 
現地の通訳に「これは何だ?」と聞くと、「鰐除けの柵だ」と答えられる。 
こんな山奥に鰐が出るのか!? 驚いていると、次のように教えてくれた。

歳を経て知恵を付けた鰐は、人間を好むようになる。 
言い伝えでは、鰐たちは人が持つ知恵を欲するのだと言われている。 
鰐はここから二時間ほど離れた川よりやってきて、道を通りがかる人を襲う。 
人が通り過ぎると、後足で立ち上がり、背後から抱きつく。 
前足で人を抱え込むと、そのまま二人羽織のようにして川へ帰るのだそうだ。 
襲われた人が助けを求め叫ぶと、そのまま倒れてその人を下敷きにし、尻尾で 
ぴょんぴょん跳ねて連れ去るのだとも聞く。

村人が早めに気がつけば、助かることもあるのだそうだ。 
その時は、程度はひどいが怪我をするだけで済む。 
そう言って、通訳は自分の腕をまくって見せた。 
確かに、多くの大きな古傷が走っていた。

半信半疑で彼が見返すと、通訳は白い歯を見せてニッと笑った。

前の話へ

次の話へ