廃村のメンコ

469 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/09/05 23:20 ID:qudfF4Sa

友人の話。
里山を歩いていた時のこと。 
少し奥に入ったところで、小さな集落跡を見つけた。 
十に満たない家屋は、一つを残してすべて崩れ落ちていた。 
おっかなびっくり中を探索してみる。

畳床の落ちた和室の片隅に、一つだけ小奇麗な小箱を見つけた。 
中に入っていたのは、多種多様なメンコだった。 
厚紙を重ね蝋で閉じた、手作りのしっかりとした物だったそうだ。

外に出て、そのメンコを使ってみた。 
ピシャリ! ピシャリ!  
静かな廃村の中に、メンコを叩きつける音だけが響く。 
在りし日の情景が偲ばれて、ひどく物哀しい気持ちになった。

メンコを廃屋に戻し、帰路に着いた。 
その時になって、彼はメンコに触れたことを後悔したという。 
彼のすぐ後ろから、ピシャリ!ピシャリ!という音がつけて来たのだ。 
振り向いても何も見えず、だが音だけは着実に後をついて来る。 
まるでどこかの子供が、彼の背後でメンコ遊びをしているかのように。

麓に下りて大きな道に出ると、音はようやくついて来るのを止め、夕暮れの 
山の中へと引き返していったそうだ。

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