湖面の影

226 :聞いた話:03/12/24 00:08

会社員に聞いた話。 
ダムサイトで弁当を食べた後、柵にもたれてダム湖を眺めていた。 
強い陽射しの中、断崖の下の湖面には真っ黒な影が広がっている。 
と、聞き慣れない音が聞こえてきた。紙を擦り合わせるような乾いた音。 
聞こえると言うより、耳鳴りのように頭の芯に響いて意識を揺さぶる… 
「**さん!」 
突然、同僚に後ろから呼び掛けられて我に返った。 
上半身が覗き込むように断崖の方に乗り出していて、両足が宙に浮いている。 
いつのまにか柵を乗り越えようとしていたらしい。 
そこで初めて気が付いた。 
真昼のこんな時間に、影があんなにも広がるはずが無い… 
慌てて柵を離れようとした時、湖面の影が無数の人型に分かれてサ─ッと散った。

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