顔の浮かぶ煙

204 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/23 00:50

知り合いの話。
彼女が幼い頃、子ども会のキャンプに参加していた時のこと。 
夕食の準備をしている皆の頭上に、白い煙が漂っていたそうだ。 
彼女の目はそれに釘付けになった。 
煙の中に隣家の小父さんの顔が浮かんでいたからだ。

見ているうちに、煙の顔はいろいろと移り変わっていった。 
笑っている彼女の母親の顔や、何かしゃべっている知り合いの小母さんの顔。 
怒っているような友達の父親の顔に、きょろきょろしている子ども会の会長さん。 
どうやら、その場で働いている大人の表情を、一つ一つ真似しているようだった。

やがて煙の顔は、彼女に己の姿が見えていることに気がついたらしい。 
見知らぬ男の顔になると、目線を彼女に向けウインクを一つした。 
次の瞬間、煙は散り散りになって消えてしまった。 
怪しい煙に気がついたのは、彼女一人だけだったそうだ。

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