そちらへ行っても良いか

470 :雷鳥一号:03/12/02 23:38
知り合いの話。
彼のお爺さんは炭焼きをしていたという。 
ある寒い夜、窯の前で火の番をしていると、闇の中から声がかけられた。

 寒いから、そちらへ行っても良いか。

里の者だろうと思い、いいよと答えると見慣れぬものが姿を現した。 
それは大人ほどの大きさで、全身が黒い剛毛で覆われていた。 
目鼻さえ見てとれぬ顔を見て、腰を抜かしかけたそうだ。

 ああ、やはりそうだ。お前も俺が醜いと思うのだな!

それは哀しそうにそう叫ぶと、背を向けて山の中へ逃げていった。 
お爺さんは終始口を開くことができなかったそうだ。

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