後部座席

621 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/07 23:30
友人の話。
夜の峠道を車で走っていた時のこと。 
いきなり誰もいない後部座席に、何かの気配が湧いたのだという。 
その道は出るという噂があったので、思わず緊張してしまったそうだ。 
嫌だったが、恐る恐るルームミラーを覗き込んだ。

後部座席一杯に、大きな牛がくつろいでいた。 
最初は全体が目に入らず、牛だとは分からなかったらしい。 
仰天して振り返ると、そこには何もいなかった。 
しかしルームミラーには、相変わらずシートを舐めている牛が映っている。 
どうしたらよいか分からず、そのまま車を走らせた。

峠道を下りきる頃、ふっと気配が消えたのだという。 
ルームミラーには既に何も映っていなかったそうだ。

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