汚れた白いワンピースの女

842 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :03/12/13 23:36 
知り合いの話。
一人山道を下っていた時のこと。 
緩やかなカーブを曲がった先に、奇妙な人影があったのだという。 
汚れた白いワンピースに腰まである長い黒髪からすると、女性のように見えた。 
髪を顔前に垂らして俯いており、表情などは見えなかった。

近づくにつれ、おかしな点に気がついた。 
彼女は靴をはいておらず、傷だらけの素足だったのだ。 
声をかけようと横に並んだちょうどその時、彼女が顔を上げて彼を見た。 
彼女の白い顔はのっぺらぼうで、どこにも穴が開いていなかった。

彼が腰を抜かすほど驚いていると、彼女はおもむろに指を顔に突き立てた。 
指を突っ込んだところに大きな穴が開き、ぽっかりとした目と口ができた。 
もうそれ以上我慢ができず、彼は走って逃げ出した。

すると後ろから地面を蹴立てて走る音がついてくる! 
荷物を放り出して力の続く限り走ったのだという。 
追いかけてくる足音は、麓近くまで続いた。

後日、彼は仲間数人に頼み込んで、一緒にその山道を登ってもらった。 
彼女は現れず、彼の荷物は投げ出された位置にそのまま転がっていたそうだ。

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