イノシシ

638: 本当にあった怖い名無し 2005/05/26(木) 18:54:36 ID:omfOd62UO
茸を採りに山に入っていた作治は猪が山芋を掘っているところに出くわした。 
気づかれぬように様子を伺うとどうやらそばにいる仔猪のために奮戦しているらしい。 
作治は親猪に石を投げつけた。動きを止めたイノシシは不審そうに周りを見回すが作治には気づかない。 
仔猪の仕業かと鼻先でこれを諫めた親は再び山芋を掘り起こしはじめる。 
作治が二度三度と石を投げると、かんしゃくを起こしたのか猪は鼻先で仔を突き殺してしまった。 
親はしまったと後悔したようだが、暫くするととぼとぼと山の奥深くに戻って行った。 
山芋に加えて思いがけず仔猪の獲物まで得て、作治はほくほく顔で山を下り始めた。 
しばらく行くとコンと頭に何か当たる。気のせいかと二三歩進むとまた頭に小石を当てられた。 
血の気が引いた作治は山芋と仔猪をその場に打ち捨てて歩みはじめたが、再び小石が飛んで来た。 
仕方なく籠一杯の茸と山菜もその場に置き、夢中で山を駈け降りたそうだ。

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