眼鏡

151: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/06/20(月) 01:27:13 ID:JpRv6rBm0
先輩の話。
一人山中で露営していた時のこと。 
夜中にザッザッザッ・・・という、砂を踏みしめる音で目が覚めた。 
何かがツェルトの周りを歩き回っている。 
どうやら、音を立てている主は複数いる様子だ。

狸かな?寝袋に包まって考えていると、いきなり音はピタリと止んだ。 
同時に何やらブツブツ呟く声が前後左右から聞こえだした。 
内容は聞き取れない、しかし明らかに言葉を紡いでいる。

動物じゃない!身を硬くする彼の鼻に、肉が腐ったような臭いが入ってきた。 
もう寝るどころではない。 
辺りが白み始める頃、ようやくブツブツという声は聞こえなくなった。 
恐る恐る外を覗いてみたが、辺りには何も居ない。 
しかし何かが居た証拠に、ひどい臭いがテントの周りに立ち込めている。

大きく息を吐いて外に出ると、臭い以外にも遺留品があった。 
弦が壊れレンズも割れた眼鏡が五つ。忘れ物のように落ちていた。 
気味が悪いので、無視してそこを発ったのだという。

果たして次の夜にも、怪しい声音と饐えた臭いがテントの周りに現れた。 
そして翌朝、やはり壊れた眼鏡が五つ残されていた。 
彼は穴を掘って眼鏡を埋め、形ばかりだが手を合わせ弔った。

効果があったのか、それ以降、怪異に襲われることはなかったという。

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