504: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/11/15(火) 22:50:27 ID:O/xIqQ6J0
夜明け前に目覚め、テントの外へ出た。 
明かりといえば、冴え冴えとした月と、小さくきらめく星だけ。 
東の空は、まだ暗い。 
ヘッドランプを点灯させる気にならず、トイレへ向かった。 
じゃりじゃりと小さな足音を立てて歩いていると、前方から 
熊よけの鈴の音が近付いてくる。
小さいが高い音で、夜中ともなればその音は、結構耳に響く。 
静かなテント場を通過する時くらい、音を立てないように 
すれば良いのにと思っているうち、すれ違った。

音とすれ違った。

立ち止まると、すぐ後ろで音が止まった。 
振り返ろうとして、思いとどまった。 
きっと、何者も居ない。 
歩き出し、背後で遠ざかる鈴の音を聞いていた。

トイレを済ませ、多くのテントが張られたテント場を 
眺めながら自分のテントへと戻った。 
テントのひとつから顔を出している女性と目が合った。 
大きく見開かれた目。 
たまたま目が合ったのではなく、ずっとこちらを 
見ていたような目だった。 
その目が俺を見つめ、さっとテントの中に引っ込んだ。 
入り口のファスナーが慌しく、荒っぽく閉じられた。

背後で小さく高い、熊よけの鈴の音が響いた。

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