チェーンソウ

290: 聞いた話 ◆UeDAeOEQ0o 2005/11/05(土) 00:55:18 ID:LuiSAXYO0

聞いた話。
夏のある日、セミの鳴き声がシャンシャンと響き渡る裏山で、男が薮の整理をしていた。 
途中、チェーンソウの燃料が切れそうになったので、一旦スイッチを切って止めた。 
エンジン音が途切れてしんとなった薮の中、男の背後でカサ…カサ…と軽い足音がする。 
てっきり誰かが登ってきたのかと思って振り向こうとした男の手の中で 
何もしていないのに、突如ヴァンッヴァンッとチェーンソウが動き始めた。 
慌てて正面に向き直ると同時に、背後の地面がドスンッと揺れる。 
男が再びチェーンソウを止めて振り向くと、目の前に背丈よりも大きな岩があった。 
あっけにとられる男の耳に、さっきまでの静寂が嘘のようにセミしぐれが鳴り響いた。

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