犬の声

221: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/10/31(月) 21:07:47 ID:joz1r2Z+0
友人の話。
彼の家近くの山中には廃病院がある。 
といっても残っているのは基礎だけで、よくそこを散歩するそうだ。

ある日、地下に降りる階段を見つけた。瓦礫で巧妙に隠されていたのだ。 
降りてみると途中から日の光は届かなくなっており、眼下は真っ暗。 
更に降りようかどうしようか迷っていると、ふっと空気が生暖かくなった。 
同時に、饐えたような臭いが地下の闇中より上がってくる。

 この下で何か死んでる?

次の瞬間、いきなり下の方からけたたましい吠え声が聞こえてきた。 
階段一杯に反響する、おびただしい犬の声。 
物凄い勢いで、階段を彼の方へ駆け上ってくる。 
必死で階段を駆け上り外に飛び出した途端、声はふっつりと聞こえなくなった。 
何かが追ってくる気配も既に感じられなくなっていたという。

今でも散歩は続けているけど、件の階段には近よらないよ。 
そう言って彼は笑っていた。

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