鳴き声

774: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/12/01(木) 00:00:38 ID:2fYbLf8z0

同僚の話。
山里で道路工事をしていた時のこと。 
ギャアギャアとけたたましい鳴き声が聞こえた。 
烏だ。夕暮れの茜空の中、黒い影が必死に羽ばたいている。 
何を騒いでいるんだろうと見ているうち、おかしなことに気がついた。

烏は何かから逃げるように力一杯羽を振っている。 
しかし、その身は少しも前進していないのだ。 
まるで見えない綱に引っ張られているかのように。

やがて力尽きたのか、烏は羽ばたきながら竹薮の中に引き込まれていった。 
ふっつりと鳴き声も聞こえなくなり、それきり辺りは静かになる。

仕事が終わってから、その竹薮に足を運んでみた。 
黒い羽根が少し散らばっていたが、他には何も見えなかったという。

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