細い手

894: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/04/29(土) 00:36:00 ID:o0Cxbb940
先輩の話。
夕暮れ、茜色に染まる薄野原を歩いていた時のこと。 
すぐ側でガサガサと音がするので、何かなとそちらに向かってみた。 
薄の茶色葉の間を、白くて細長い物が一本横切っている。 
彼の胸くらいの高さで、両端はどちらも薄に埋もれて見えない。

一瞬、大きな蛇かと思ったが、よく見ると鱗がなく柔らかそうだ。 
見ている間もズリズリと薄の間を移動しているよう。 
尻尾を見てやろうと、しばらく待ってみた。

やがて現れた末端に、尻尾は付いていなかった。 
女のものに思える細い手が、彼の目の前を横切って薄野に消えた。 
しばらく硬直したまま動けなかったという。 
必死で足を動かし、何とか日が暮れる前に薄野原から出たそうだ。

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