カーブミラー

655: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/07/30(日) 11:10:50 ID:cBkOsVnS0
レンガを積み上げた古い、小さな暗いトンネル。 
15メートル程度の短いトンネルだが、 
出口は垂直な右カーブ。 
曲がり切れなければ、谷底まで落ちる。
右カーブには、カーブミラーが立っている。 
「あのミラーは、見たらいかん」 
当時住んでいたマンションの大家は、そう言った。 
お化けが映ると言い切った。 
無論、土地の噂だ。 
大家自身が見たわけではない。

そのトンネルの手前で車を降りた。 
トンネルの出口に、カーブミラーがある。 
どうやら、きちんと道を映している。

入り口脇に、小さな石碑がある。 
トンネル工事で死亡事故があったらしい。 
事故はいずれも、明治の初め頃に発生している。 
石碑は、後で建立されている。 
死者は5人。

日付を見ると、事故は4回も起こっている。 
工事の規模からして、この数は異常だろう。 
本当に事故だろうか。 
トンネルを歩いて抜け、カーブミラーを確かめた。 
ミラーにおかしな点はない。
車に乗り込み、走り出そうとして気付いた。 
左右のドアミラーに助手席が映っている。 
助手席側はともかく、運転席側のドアミラーが、 
こんなに内側を向くはずがない。 
ルームミラーにも、助手席が映っていた。

そして、結露するほど、車内は冷え切っていた。

次の休み、慰霊碑に花を供え、手を合わせた。

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