足音

333: 本当にあった怖い名無し 2006/08/09(水) 06:10:52 ID:/fLJBvYV0

実感した話。
もう何年も、原付バイクにテントなどを積み込んで、 
暇を見つけてはツーリング野営をしている。 
ギアもないスクーターというのが苦手で、 
ここ数台はスーパーカブを愛用している。 
ただ、景気が悪くなって、常識のないホームレスが増えたせいか、 
町並みに近いところでのテントは難しい。

その点、山は気楽だ。 
観光林道の茶店や展望台(たいていは見晴らしのいいカーブ)など、 
土日の林道バカ共のバカ騒ぎさえ避ければ別天地だ。 
最近はさらに、そういうところから一息山道を登ったあたりに幕営する。

夜中に物音で目が覚めることがある。 
よく聞くと、テントをゆるりと巡っている、何者かの足音がするのだ。 
それは決まって「仁義」を切り忘れたときに起こる。

小学生の頃の夏休みには、祖父母の家に一人でずっと逗留していたが、 
祖父と野山を駆け回りながら、そのへんで立小便したくなったとき、 
「御免なさいまし、と言うんだよ」と祖父が教えてくれた。

テントを張るにも、この「御免なさいまし」の仁義を切り忘れると、 
決まって夜中に、テントを巡る足音を聞く。 
はじめのころは朝まで震えていたが、 
いまでは「気が利きませんで」と一人ごちて、その後は寝られるようになった。

「御免なさいまし」 
人の付き合いでも、人と山との付き合いでも、 
求められる礼節なのかもしれませんな。

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