ある男の懺悔

141: オマージュ ◆DCEejEYaj2 2006/08/07(月) 22:25:12 ID:34NXnKJJ0
ある男の懺悔
俺、婆ちゃん子だったんだ。 
婆ちゃん、過疎の山ん中住んでたんだけど・・・俺が18の時。 
ある日、婆ちゃんちが火事になって、焼け跡から、婆ちゃんの死体が発見された。 
俺は愕然としたよ。 
何故って、前の日、婆ちゃんちに遊びに行っていたから。 
そして、おかしい事に気付いた。火事の原因が。 
婆ちゃん、ひどく目が悪くなって火は使わなくなってたんだ。 
食事は介護のサービスで食事のお届けってヤツを頼んでたし、風呂もデイサービスでしか入らなかったらしいんだ。

だけど、火事? 
火も元がないのに、火事?? 
俺は疑ったよ。これは放火じゃないのか、って。 
警察の人も口を割った。火の元は土間だった、って。 
ありえないだろ? 土間っていや、玄関だ。火の気なんかある訳ない。

だけど、俺はそのまま黙っちまった。 
気付いたんだ。 
婆ちゃんは目が悪かった。そして、いい人だった。 
近所付き合いもいいし、自分ち家の前を掃除する時は、三軒隣りまで掃き掃除をかかさない人だった。 
土間には、次の日出す枯葉の入ったゴミ袋が転がっていた。
その日、婆ちゃんは家にデイサービスに出かけていて、帰ってくるのに小一時間かかった。 
俺は家の前で待ちぼうけをくらってた。

俺は、その日以来、タバコは止めた。 
二度と吸うつもりはない。

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