外に出てはいけない日

88 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2011/04/18(月) 20:24:14.68 ID:90R4Xh7N0 [1/4回(PC)]
仕事仲間の話。
山奥の実家に里帰りした折、義父の炭焼きを手伝うことにした。 
幼い息子も行きたがったので、連れていくことにした。 
義父は大層喜んだが、一つだけ妙なことを言う。 
「今夜遅く、日付の変わる頃合には焼き小屋の外に出られないから。 
 トイレは早めに済ませておくか、我慢しろ」

「どうしてですか」と問えば「今日はそういう日だから」としか答えない。 
興味を覚え、深夜まで起きていたが、特に変わったことは何も生じなかった。 
少し残念に思いながら眠りについたのだという。

しかし翌朝、息子がこんなことを口にする。 
「昨日の夜はお外ですっごい音がしてたね。象でも通ったのかな?」

「象は日本にいないし、大体が昨晩そんな音はしなかったぞ」 
彼はそう嗜めたが、息子は頑なに、大きな足音が聞こえたと言い張る。 
義父は「ほう、あれが聞こえたか」と少し感心したような声を上げた。

「僕には何も聞こえませんでしたが」と彼が困惑しながら尋ねると、 
「まぁ見えたり聞こえたりしない方が良いかもしれん」とだけ返す義父。

大きくなった今も時々、息子はあの夜の話をする。 
「あの音、親父だけ聞こえなかったんだよな」と嬉しそうに。 
それを聞く度、何故か悔しくなるのだそうだ。

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