星山荘

892 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] 投稿日:03/07/24 00:01

某県某砂丘(これ言ってしまうとすぐ分かりそうですが)に向かう道。 
途中に橋があるんですが、市の中心部から向かうと橋を渡ってすぐの所に 
脇にそれる道があるんです。其処を少し進むと廃墟となった山荘があります。 

高校3年の夏、1つ上の先輩の家で麻雀してたんですが、その時TVでよく 
ある「怪奇特集」みたいなのやってたんです。 
で其処に居た6人の内一人が一言「霊なんておらんよ」「イヤおると思う」 
「見た事あるんか?」と言うお決まりの会話が繰り返される中、先輩が切り 
出しました・・・「実はな・・・」 

星山荘の名前を聞いたのはそれが初めてでした。その時負けがこんでいた俺は 
苦し紛れに「行ってみましょうよ」と持ちかけました。 
「そうだな・・・行ってみるか」という結論に辿り着くまでにはそれ程時間は 
かかりませんでした。 

先輩から聞いた星山荘の噂・・・「脇道にそれてしばらくすると電柱に御札が 
貼ってあるんだわ。俺も行った事無いから知らんけど」 
といった普通の小ネタでした。それが俺には救い舟だった訳ですが・・・ 

先輩の家はカメラ屋をやっていて色々と肝試しには都合の良い物が揃って 
いました。8mmビデオ、ポラロイドカメラ、普通のカメラを持ち車に乗り 
込み現場へ向かいました。車中、「霊は本当に居るのか?」という話題で 
盛り上がったのですが、6人の内2人は頑として霊の存在を認めようと 
しませんでした。その内の1人が後日俺にこう言いました。 
「信じて無いワケじゃ無かったんだけどな」「空気があるだろ、その場の」 
「すげー後悔しとるけどな」・・・ 

例の橋を渡り脇道にそれた所から現場まで徐行して電柱に注目しましたが、 
結局御札は何処にも見つかりませんでした。 
少しガッカリ、内心ホッとしながら星山荘の入り口で車を降りた所で先輩が 
少し意地悪そうな笑みを浮かべてこう言いました・・・

「おい、AとB。(信じて無いと言い張った2人)」 
「お前ら信じて無いんだろ?2人で行って来いや」 
Aはぎょっとした様に「えっ!?」と言って固まってしまいました。 
するとBが「あぁいいで。おいA行くぞ?」と言って8mmとカメラ2つを 
持ってAに「ほれ、お前ビデオな」と手渡しました。 
Aも此処まで来て断るワケにはいかず、明らかにビビリながら付いて行きました。 

しばらくして2人は何事も無かった様に帰って来ました。 
その場でポラロイド写真を見てみましたが何も写っていませんでした。 
「何だ?何も写ってないがな」「やっぱりただの噂だったんか」等、 
口々に悪態をつきながら車に乗り込もうとした時、俺はぎょっとしました。 

すぐ側の電柱に御札の様な・・・ボロボロになった紙切れが今にも落ちて 
しまいそうにへばり付いているんです。思わず「ウワッ!!」と声をあげ 
て後ろにいた先輩の足を思い切り踏んづけてしまいました。 
「痛っ」「何だおい?」俺はなるべく平静を装いながら、 
「あそに貼ってあるのって御札っぽく無いですか?」と言い電柱を指差しました。 
皆が寄ってきて確認しましたが結局何が書いてあるか解らず御札である事を 
確認出来ませんでした。が、あれはやはり御札だった様な気がします。 
今となっては確認する術もありませんが・・・ 

帰り道、AとBは「全然怖くなかった」とか「やっぱり霊は居ない」等と 
軽口を叩きながら余裕の表情でした。 

先輩の家に着いてもう一度ポラロイドに何か写って無いか確認しました。 
やはり何も写って無い・・・・ 
「じゃあビデオ鑑賞でもしますか!」とB。 
皆が集中する中ビデオが再生されました。 
Aはやはり怖かったらしく「御免下さ~い」「失礼しま~す」等と 
少しでも自分の中の「恐怖心」を消そうと努力していました。 
見終わった後に先輩が「やっぱ何も写ってねーなー」 
「見落としとるかも知れんし、もう一回見てみるか?」 
と言ってもう一度再生ボタンを押し、今度は少し和やかに「上映」が始まります。 
そこで俺はある事に気付きました。少なくとも俺は2回目で。 

確かに見落としは無かったのです。しかし「聞き落とし」はあったのでした。 
Aが「御免下さ~い」と言った後に、かすかなノイズに混じって、それは女の人の声でした。 
「はい、どうぞ」 
小さな、本当に物音に紛れそうなか細い声でしたが、確かにそう答えているのが聞こえました。 
「失礼しま~す」 
「散らかっていますが・・・」 
やがてAも先輩も気がついたらしく、顔には脂汗がにじんでいました。 
「おい、これって・・・」 
ビデオは進んでいき、Aが独り言を言うたびにその声は答えていました。 
「いい部屋ですね~」 
「ありがとう」 
「あ、ふすま破いちゃった」 
「気をつけてね」 
もうみんな無言でした。 
そしてやがて星山荘を出るとき。 
「それでは失礼しま~す」 
「 お い 待 て 」 

俺の気付いた事。それは「雑音」「ノイズ」 
俺は無意識に「このザザッって音何ですかね?」と聞いていました。 
「ああ、俺もさっきから気になってんけどな」と先輩。 
「ちょっと巻き戻し」テープの始めまで巻き戻して再生。 
「ボリューム上げて」と先輩。そこから聞こえてきた「ノイズ」には・・・ 

A「失礼しま~す」・・・「ザ・・ザザマセ」 

ん?何か聞こえた?皆息を呑んで見守る中もう一度最初から再生・・・ 

A「失礼しま~す」・・・「・・いらっしゃいませ・・・」 

その「ノイズ」にはありえない声が紛れていました。ただ、その声が聞こえた 
のは俺と先輩とAの3人だけでした。 
他の3人と途中から合流した先輩の彼女には「何も聞こえていない」んです。 
Aは顔面蒼白になり、その後しばらく元気がありませんでした。 

今でも、皆で飲みに行ったりすると「例のビデオ」の話で水掛け論したりします。 

その後、もう一度人集めてビデオ上映会したんですけど今度は雑音すら聞こえ 
ませんでした。「ノイズ」が消えていました・・・ 

この話について後に色々脚色されて某県中に広まりました。 
元は、俺と数人が体験したこんな話です。

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