ダウンライト

669 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/15 22:58 ID:M0u7WNxu
息子を出産したあと、しばらく夫の実家でお世話になった時、息子がまだおなかにいたころ、風邪をこじらせて亡くなってしまったおじいちゃんの部屋を使わせてもらった。
88歳の大往生で、それまで病気ひとつせず、ぼけることもなくとても元気で飄々としたおじいちゃんだった。

夫と結婚したころにはもうだいぶ耳が遠くなっていて、大した会話をすることはなかったけれど、それでもおじいちゃんの人柄の良さは感じていたので、亡くなったと聞いたときは悲しかった。

生まれたばかりの息子と二人、昼も夜もない生活を送っており、ぼんやりした状態であったことは先に説明しておく。

 ある夜、お腹をすかせて泣き出した息子に乳を与えている時に、部屋にふたつあるダウンライトの片方がチカチカと点滅し始めた。
夜中におむつをかえることも頻繁にあるので、眠るときでもダウンライトをつけていたのだ。
 私は「電球が切れかかっているんだな」と思い、翌日にでも夫に取り替えてもらうように言おう、と考えていた。

出産直後しばらくは、3時間おきに目を覚まして空腹やおむつの汚れを訴えて泣く息子と共に、3時間おきに起きたり眠ったりの生活を繰り返す。

なので夜中でもそれほど「眠い」という感覚はないのだが、常にぼんやりとした状態が続いている。
だから物事を深く考えられない。
ダウンライトの点滅はそれからも頻繁に起こっており、夫にも伝えたと思うのだが、さほど気にせず毎日を過ごしていた。

出産後1ヶ月が過ぎて、身体もだんだん回復してきた頃、夫の家族と居間で食事をしているときにそういえば、と思い出し、「電球がきれかかってるみたい」と話をした。
すると義母が「あなたたちがくるまえに部屋を掃除して、電球もかえたばっかりなのよ」と言う。
「そうなんだ。なんでチカチカしてるんだろうね。おかしいねえ」
と、夫や義母も一緒におじいちゃんの部屋に来て点検をはじめた。

何度確かめても、普通につく。
そういえば・・・ダウンライトがチカチカするときは、部屋に私と息子の二人だけの時しかないな、と気づいた。

夫の家は女系家族で、夫は親戚からの養子、義父と亡くなった義祖父は婿養子、と、男子は3代続いた養子なのだ。

内孫としては既に娘がおり、初孫ということもあっておじいちゃんは娘をとても可愛がってくれていた。
息子も出来るなら会わせてあげたかった。
男の子だったから、おじいちゃんが居たらさぞかし喜んだだろうに、と夫と常々話していた。

その日を境に、ライトの点滅はおさまった。結論としては、夫の「おまえの気のせいだろ」ということでおさまった。
「怖い」という感情は湧かなかった。

おじいちゃんが孫を見に来ているんだろうな。言葉に出しては言わなかったけれど、おじいちゃんきっと男の子の孫が欲しかったんだろうな、と思ったから。

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