彼の足音

265 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/13(日) 19:23
これはちょうど今ごろの話です。 
K子さんは彼氏と遠恋している大学生でした。
 
遠恋といえど二人は地元は同じで、長期休みには地元でいっしょに過ごすことができました。 
大学4年生の時の夏休み、彼女は7月の下旬から休みでしたが、彼は8月からでした。 
先に地元に帰った彼女は、毎日のように電話をして、 
『早く会いたいよー』 
と甘え、彼氏も 
『休みになったらすぐに帰るよ』 
と答えていました。しかし、8月を目前にひかえたある日。突然彼が、 
『ごめん、帰るのちょっと遅くなりそうだよ』 
と言ったのです。当然彼女は不機嫌になり理由を問いただしましたが、 
研究やバイトが忙しくて、ということでした。彼女もしぶしぶですが納得し、 
毎日電話をする日々が続きました。そして8月8日の夜突然彼の両親から電話があり、 
彼が7月の終わりに亡くなっていた事を知らされました。部屋で趣味のギターを抱えたまま。 
死因は心臓発作でした。夏休みに入っていたので、学校の友達も気づかず死臭に気づいた 
隣人が通報したそうです。 
『彼は私と電話していた・・・』 
彼女は心労と恐怖で体をこわし、病院に入院してしまいました。 
 8月14日の夜、いつもと病室の雰囲気が違うことに彼女は気づいていました。 
空気が生ぬるく、動かないのです。不審に思っていたその時、急に空気が振動しました。 
コツン、コツン、コツン・・。彼女にはそれが彼の足音だとすぐにわかりました。 
不思議と恐怖は無く、静かに彼があらわれるのを待ちました。そして、 
『ただいま、待たしてごめんね』 
彼が生前とはまったく変わらぬ姿であらわれました。 
『会いに来てくれて嬉しいけど、あなたは死んでいるの!ここに来てはいけないの!』 
彼女は精一杯彼にうったえました。 
『馬鹿だなあ・・・・・・・、お盆以外のいつ帰って来いっていうんだ?』 
恐怖に凍りついた彼女に 
『来年も、再来年も・・・会いにくるよ。君から僕に会いに来れるようになるまで。』

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