挨拶
152 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM sage 2014/01/06(月) 18:27:08.33 ID:x0qrZhc90
友人の話。
彼が幼い娘さんをドライブに連れて行った時のことだ。
山頂に造られた公園に車を停め、そこの遊具で遊んでいた。
夕方になり、そろそろ帰ろうかと考え始めた頃合。
先程まで近くにいた筈の娘がいない。
辺りを見回すと、公園の外れで見覚えある小さな姿がしゃがんでいた。
そこにある石碑の前で、何やら地面に落書きしている様子だ。
「帰るぞー」近よりながら、そう声を掛ける。
娘は立ち上がると、石碑に話し掛けた。
「また今度遊ぼうね!」
飛び付いてきた娘を抱き上げ「誰に挨拶したの?」と尋ねる。
「あそこにいる子たち!」
娘がそう嬉しそうに指差した碑の前には、誰の姿も見えなかった。
「父さん見えないの? ほら、みんな手を振ってるよ」
そんなことを言われても、やはり彼には何も見えない。
しかし娘は石碑に向かい、元気良く手を振り続けている。
娘さんを抱いたまま、逃げるようにそこを後にしたという。
気になったので、後で少し調べてみた。
その石碑のあった付近は、整備される前は無縁墓地だったらしい。
「だからね、あれ以来あそこには連れて行ってないんだ。
神経質だとは思うんだけど、父親としてはね」
そう言って彼は苦笑していた。