現れた男

672 :雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM @\(^o^)/:2014/06/05(木) 19:51:59.32 ID:Mvm4H1r50.net
友人の話。 

家族でキャンプに出掛けた日の夜。 
夕食を終え、キャンピングカーの中でトランプなどして遊んでいると、 
突然つんざくような悲鳴が聞こえてきた。 

子供には外に出るなと言い含め、彼一人が表を確認しに行った。 
麓の方から段々と、悲鳴はこちらに近付いてくる。速い。 

いきなりライトの明かりの中、空中に人影が現れた。まだ若い男性だ。 
酷く顔を歪めて振りながら「うわぁー! ぎゃぁー!」などと大きく叫んでいる。 
確認できたのは一瞬で、あっという間に頭上を飛び越えて見えなくなった。 
空を飛ぶなどという感じでなく、見えない何かに掴まれて飛んでいくという風だった。 

悲鳴が聞こえなくなると車の中に取って返し、何でも無かったとだけ家族に伝える。 
訝しげな家族を寝かし付けたが、彼自身は一睡も出来なかったという。 

翌日、予定を早めに切り上げて下山し、近場の警察に報告しに行った。 
何というか、まともに相手にされなかったらしい。 

「自分が幻覚でも見たのかなぁ。 
 それとも、やっぱりあの人、本当に何かに攫われてしまったのかなぁ。 
 だったら可哀想だけど、でもどうしようもできないよなぁ」 
彼はくよくよとそう悩んでいた。

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