臭そう

167 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/09/23(火) 11:03:54.94 ID:aAUJ6mAc0.net
おれは昔はバイク、今は車で峠を攻めるのが好きなのだが、いつだったか 
「十文字峠」に行った。 
春先の上天気の日で峠の手前だったか、小川のキレイな流れの横に小道が並んで 
峰のほうに向かってる。 
雑木の裸木に暖かい陽が降り注いで、熊笹の丈も低く、散策にはもってこいの山道だった。 
おれはめったにそんなところで車を降りないのだが、あんまりいい道なんで行ってみた。 
しばらく行くと、左手のほうにわき道があり、そこから登山者が一人上がってきた。 
ちょっと見、やせがたの60代前半の人で軽く会釈して、おれの前をタッタッタッという感じで軽快に
登って行く。 
まったくの軽装で、背中には小さめのデイパック、スパッツにウォーキングシューズみたいのを 
はいていた。 
おれはちょっといやな気がした。 
霊的なものではなく、「臭そうだ」と思ったんだ。 
その人は黒地に黄色かなんかの柄が入った上下だったんだが、とにかく汚い。 
汗が白くこびりついてスパッツはアーミーグリーンのだんだら模様、ウインドブレーカーは色あせてる
んだか、わけのわからない色になってる。 

「トレッキングでもしてるのかな?車で来てるんだろーな。電車じゃ、帰りは顰蹙ものだ」 
別に臭いは感じなかったのだが、おれは思わず歩調をゆるめ、その人は目の前の角を曲がっていった。
相変わらずタッタッタッという感じで…。 
その姿が木の間がくれに数秒間見えていた。 
おれも間もなく同じ角を曲がったんだが、その先は直線で傾斜が急になってる。 
面倒くさくなって引き返そうとしたとき、先に行った人が気になった。 
だが、いない、道だけが静かに続いていた。 
このときも、怖さがあとからジンワリきた。 
「そういえば、あの人、音がしなかったよな?」 
タッタッタッというリズムはあの人の動作から感じただけで、「臭そうだ」という印象も、見た目の 
汚れ具合だけだったのだ。 
あの人はひょっとしたら、遭難者かもしれない。 
あの汚れ具合は雨風にさらされた遺体の服の色ではないか?、やせがたの初老の印象はひからびた遺体
そのままではなかったか? 
おれは今でも、あの人が最初にちょっと会釈したのを思い出す。 

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