雀の看病

320 本当にあった怖い名無し sage 2012/02/08(水) 03:32:27.41 ID:leUdKWAa0
いるかどうか解らないけど、小さい頃の話をば。 
途中に少しだけグロい表現がありますが、いいと言う方は読んでくださると嬉しいです。 

小学2・3年生ぐらいの頃の話なんですが、当時私は庭で一人遊びをするのが大好きな子で、空になったプリンの容器に土を詰めて、それを玄関の石段に積み上げたり、地面を掘って虫を探したり、お花の輪っかを作って母親にプレゼントしていたりしていました。 
その日も庭の探検をしていたのですが、ふと道路に続く歩道に目を向けると、ちょこんとした小さな物体を見つけました。近付いて見てみると、雀の死骸でした。 
見た目には外傷はなく鳥の目も閉じられていたので、それほどの嫌悪感もありませんでした。 
わたしはその死骸を拾い上げて生きていないことを確認すると、庭に隣接した畑の奥のほう(石壁で隔てられてあり、そこだけは整備のされていない場所でした)にのぼり、そこに穴を掘って、冷たい雀を埋めてあげました。 
そのときは悲しいとかそういう感情はなくて、ああ、埋めてやらなきゃなとぼんやり考えていたと思います。埋め終えたわたしはそれで満足したのか、その後すっぽりと、その雀の死骸のことは忘れていました。 

二週間ほどしたあるくもりの日、わたしはいつも通り庭でひとり遊びをしていたのですが、ふと、あの雀のことを思い出し、どうなっているんだろうと、子供ながらの残酷な好奇心が頭を掲げ、雀を埋めた穴を掘り返すことにしました。 
今考えるとなんて罰当たりなことをと思いますが、そこらへんはスルーしていただければ幸いです。 

そして、雀を埋めたときと同じスコップで、埋めた辺りの場所を思い出しながら掘っていくと、やがて雀らしき感触がスコップに当たって、発見することができました。 

今思うと、礼節うんぬんより切実に、掘り返さなければ良かったと思います。 

雀の身体は、虫に食われて内蔵がはみ出してぐちゃぐちゃになっていました。 
翼は変な形に剥ぎ取られ、だらんと垂れ下がり、片目もなくて、蟻が体の隙間から出てきて・・・わたしは悲鳴をあげて雀を地面に落としてしまいました。 
怖くて怖くて、でも次第に、悲しみが襲ってきて、わたしは嗚咽をあげながら、雀の身体にまとわりつく蟻を払い落としました。 

出てけ、食うな、食べないで、出てけ!と、雀の体をはたいて蟻を追い出しました。それが終わる頃には、わたしは目が痛くなるぐらい泣いていました。 
ごめんね、ごめんねと何を謝っているのか解らないぐらい混乱していて、ただひたすらに雀に謝っていました。 

くもり空から雨が降ってきましたが、わたしは構わず石段の上に雀の死骸を置いて、土をかけて弔いました。 
地面の中にいると、虫に食べられる。でも埋めてあげなきゃ、と考え、辿りついた答えだった気がします。 
わたしは後悔と悲しみでいっぱいになりながら、家の中に戻りました。 

雨に打たれた所為だと思いますが、その日から言葉通りに三日三晩、風邪をこじらせてしまい、学校も休んで寝込みました。 
熱にうなされながらわたしは、雀が怒ってるんだ、わたしがあんなことしてしまったからと自己嫌悪に陥りました。 
わたしは元々身体が弱く、風邪を引いたら一週間休むことも度々あったのですが、今回の風邪は何故か絶対に、雀が自分に怒っているんだと信じていました。 

三日目の深夜のことです。わたしは薬が切れ、頭の痛みに目を覚ましました。 
起き上がることもできなかったので、目を閉じてまた睡魔が訪れてくれるのをじっと待っていたのですが、頭の痛みが邪魔をして、上手く寝付けませんでした。 
親を呼びたい気持ちを堪えていた、そのときです。 

額に、何か羽毛のような、柔らかい感触が当たってきました。 
わたしは眼を開けて周りを見渡すと、顔の直ぐ横、こめかみあたりに何か小さな黒い物体があることに気付きました。 
こんなに近くにいるのに、明確な形は視認できませんでしたが、わたしはその物体が雀のように思えたのです。 

その翼のような感触は、何度も何度も額を撫でてくれました。頭の痛みは引きませんが、確かにぬくもりがあるそれに気分が落ち着いていくのを感じ、わたしは涙をこぼしました。 

許してくれるの?と心の中で問い掛けると、 
ちちっ 
と返事をするような鳥のさえずりが聞こえてきました。 
それに安堵したわたしは、いつの間にか眠ってしまいました。 

翌朝に眼が覚めると、昨日まであんなに酷かった風邪が嘘のように治っていました。 
すっきりとした爽快な目覚めに母親さえ驚いていましたが、良かったねと言ってくれました。 

わたしは今でも、あの雀が治してくれたのだと信じて疑いません。 

子供の頃の不思議な体験でした。長ったらしくなってしまいましたが、こうして書けて満足です。 
ありがとうございました。 

前の話へ

次の話へ