検査があるから

837 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/10/16 07:41
私が小学校3年生のとき。 
その日はたまたまオシャレしていて、私は赤のヒラヒラしたスカートに 
ちょうちん袖のブラウスを着ていた。 
学校が終わってトコトコと家路を急いでいたら 
後ろから車が来て、私のヨコでとまった。 
車にはオジサンが一人乗っていた。ダッシュボードの上にはカバーを取った文庫本が一冊、おいてあった。 
めがねをかけて、中年くらいだった。 
オジサンは 
「保健所の者なんだけど、君の家で検査があるから、急いで家に帰ろう。 
さぁ、車に乗って」 
といった。 
宮崎勤の事件の大騒ぎが落ち着いて、 
その模倣犯がちょくちょく出始めたような時期であった。 
あまりのオジサンの言ってることが素っ頓狂だったので、 
小学三年生の私もさすがに引っかからなかった。 
「いや、いいです」 
といってスタスタと通り過ぎた。 
今度はオジサンは車を私の前に回りこんで止めた。 
「急ぐから!乗って!」 
今にも車に引きずり込まれそうな勢いだった。 

どうしよう・・・とまわりをきょろきょろすると、 
自分の100メートルほど前に大して親しくもない同級生が歩いていた。 
「かずよちゃああああぁああん!!」 
と叫んで私はその友達に走って行った。 
友達(かずよちゃん)は何事か、と目をまるくしていた。 
わたしが走り出すと、車は全然逆方向に向かって猛スピードで走っていった。 
たいしたことはないんだけど、ふとした瞬間になんとなく思い出して、 
怖くなる。少しタイミングが悪ければ、あと少し私が幼かったら・・・・・・。 

その後、私の学区付近ではそういう事件は起こらなかった。本当に良かった。 

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